柿の葉ずしヤマト・柿の葉寿司

人気急上昇、柿の葉寿司の名店。

私の地元である奈良県で数少ないご当地グルメ、柿の葉寿司。昔と比べたら徐々に知名度が上がってきている感覚はあるのですが、でも全国区かというとまだそうではない気もします。このサイトでも平宗、柿の葉すし本舗たなかを紹介してきましたが、今回は柿の葉ずしヤマトです。奈良には柿の葉寿司の有名店は4つあり、あとひとつは「ゐざさ中谷本舗」。いずれご紹介したいと思います。
ヤマトはたなかと同じく、五條市に本店を構える柿の葉寿司専門のチェーンです。歴史は他の店に比べると意外に浅く、1969年の創業。しかも当初は給食や仕出しを扱うお店であって、柿の葉寿司を製造販売するようになったのは1976年のことです。しかし味が評判を呼び、現在では10ヶ所以上に店舗を構える人気店に。また奈良県内各地の道の駅や土産物店でも売られていて、最近はよく見かけるようになってきました。著名な書家、榊莫山氏による屋号の書体と緑色の包装紙が目印です。

店の成り立ちを示す、幅広いラインナップ。

今回は當麻寺を訪ねた時にその参道入口にあった当麻店に伺いました。幹線道路沿いにあり駐車場もたくさんあって、アクセスしやすいお店です。店内には柿の葉寿司の他にもさまざまな商品が販売されていて、前身が仕出し料理店だったことも活かしたラインナップになっています。イートインコーナーもあり、奈良では定番の組み合わせである柿の葉寿司＋にゅうめんのセットをいただくことも出来ます。今回は持ち帰りで柿の葉寿司のサバ、鮭のセットを購入。秋の行楽地を巡ったあと、自宅でいただきました。

ひとつひとつ、丁寧に包まれた柿の葉寿司。

箱を開けると、まず柿の葉の芳醇な香りが一気に広がりました。柿の葉は茶葉のような特徴ある香りが食欲をそそります。当然その香りがほんのりと押し寿司の方にも乗り移って、柿の葉寿司の独特の風味を生み出しています。殺菌効果のある柿の葉を使った昔ながらの保存技術と、サバの押し寿司をより一層美味しくする風味付けが合わさった、とても合理的な食べ物なのです。ひとつひとつ丁寧に包まれた柿の葉寿司は、海のない奈良の山奥で生み出された、アイデアの結晶でもあるのです。

優しさみたいなものが、ヤマトの柿の葉寿司の印象。

というわけでヤマトの柿の葉寿司をいただきます。当然、美味しいです。個人的に柿の葉寿司が大好物なもので。ヤマトの柿の葉寿司は他よりも酸味が控えめで、その分サバや鮭の素材の味が引き立っている感じがします。酢飯もふわっとしていて、全体的に柔らかな食感に仕上がっています。わざわざ山をいくつも越えて運ばれてきた海の魚を、柔らかなシャリの上に乗せて柿の葉でそっと包んだ優しさみたいなものが、ヤマトの柿の葉寿司の印象です。その美味しさに食べ始めるとすぐに止まらなくなり、7つ入りの箱なんてあっという間になくなってしまいました。程よい酸味と甘み、また熟成されて旨味が凝縮した素材。そしてなんと言っても柿の葉の豊かな香り。口の中でそれらがブレンドされて広がるシンプルなのに重層的な味わいは、まさに柿の葉寿司でしか楽しめない特別なものなのです。

新しいことに挑戦するのもまた、ヤマトの特徴。

「東京のにぎりずしとは違った格別な味」、「今年の夏はこればかり食べて暮らした」と柿の葉寿司のことを書き記し、その旨さに魅了されていたのは文豪・谷崎潤一郎。その伝統をしっかり受け継ぎながら、新しいことに挑戦するのもまたヤマトの特徴です。サバ・鮭・あみえび・タイ・のどぐろ・椎茸・鶏そぼろの7種の柿の葉寿司がセットになった「味七色」が人気。味はもちろん、見た目の美しさも評判で、テレビ番組でもたびたび取り上げられる話題の商品です。また定番から新作まで、ほとんどの商品を通販でも買えるので、奈良を訪ねずとも一度味わっていただきたい名店です。

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