まるはち食堂・鶏ちゃん

郷土料理「鶏ちゃん」、発祥の名店。

下呂温泉に向かうのに、何か有名な郷土料理を…とリサーチすると、「鶏ちゃん」（けいちゃん）と呼ばれるB級ご当地グルメなるものがあるのを発見。最近ではメディアに取り上げられることも増えているそうです。特に下呂や飛騨地方、郡上地方においてたくさんのお店で出されているそうですが、その中でも屈指の人気店である、下呂市にある「まるはち食堂」を目指しました。
下呂の温泉街から15分ほど南下、国道から逸れ、田園がひろがる集落の中に店を構えています。この場所にまるはち食堂がなかったら、まず訪ねることもないだろうというくらい、ごくごく普通のありふれた山間の集落です。道中、本当にこんな所にあるのかと少し不安になりはじめた頃、小さな食堂に数台の車が並べて停めてあるのがまるはち食堂。15時くらいという昼食には中途半端な時間でしたが、店内は賑わっていて、数組の順番待ちでした。

下呂温泉から少し離れた田園風景の中にある、このエリアの名物グルメ「鶏ちゃん」の人気店。

のどかな風景の中に店を構える。

店内のポスター。昭和35年創業の老舗。

ジンギスカンの山型鍋で、鶏肉を焼いたことから始まった。

まず「鶏ちゃん」とは、岐阜の北部地域で昔から食べられていたもので、その名の通り、鶏肉がメインの料理です。1950年頃から食されていて、1960年頃から、地元の精肉店や居酒屋が中心になって、独自に進化していったそうです。なんでも、一時流行ったジンギスカンが下火となった頃、使う機会の減ったジンギスカンの山型の鍋を用いて、鶏肉を焼くようになったのが始まりとも言われます。
基本的にはしょうゆや味噌、塩をベースにしたタレに鶏肉を漬け込んで、しっかり下味のついた鶏肉をキャベツなどといっしょに焼いて食べるのが共通のルールですが、お店によって多種多様な味付けや食べ方があるのも特徴です。さて、元祖とも言われるまるはち食堂の鶏ちゃんとは。

ジンギスカンの流行が終わった後、山型の鉄板を流用して鶏肉を焼いたことから広まったという。

鶏ちゃんを食べる時の、心得に従って。

店内はこぢんまりとしていて、座敷とテーブルが半々程度。明るくて元気な女将さんが迎えてくれます。なにか、久しぶりに親戚の家に遊びに来たかのようなアットホームさです。食堂というだけあり、それなりにメニューがあるのですが、当然のことながら「鶏ちゃん定食」を注文。
しばらくするとジンギスカン鍋の底が見えないくらいに、鶏肉とキャベツが盛られた状態で運ばれてきます。上からタレがかけられていて、味付けはそれだけ。卓上コンロに火をつけて、焼きながらいただくという食べ方です。ふと横を見ると、鶏ちゃんを食べる時の心得を発見。「箸を持ったら離さない」「紙を破らない」「火の調節を常にする」「紙を破らないようにとにかくよく混ぜる」といった風に書かれいるので、その掟を破らぬように実践します。

焼き方と食べ方に特徴があるので、丁寧に説明書きもある。

まさに病みつきになる美味さに、箸が止まらない。

5分ほど焼いていると、鶏肉に火が通ってきます。キャベツとともに一口。ニンニクの効いた醤油ベースのタレが絶妙に鶏肉の旨味を引き立て、なんとも言えない香ばしさ。すぐにご飯（もしくはビール）が欲しくなる、病みつきになる美味さです。食べだしてからも火は止めないので、よく焼けるとそれはまた旨味が凝縮され、ちょっとしたキャベツの焦げと一緒にいただくと、ますますご飯（もしくはビール！）が進みます。
ジンギスカン鍋には紙が敷いてあるので、鶏肉の余分な油は鍋の縁へ流れていくので、それほど油っこくないですし、ぎゃくに溜まった油でキャベツを焼くとこれがまた絶品だったり、結局最後まで焼いてカリカリになった鶏肉も美味だったり。これだけシンプルな料理なのに、実は色々な楽しみ方ができるのも発見でした。
創業は昭和35年という老舗で、この地域の鶏ちゃんの元祖とも呼ばれる「まるはち食堂」。創業以来変わらないという秘伝のタレを自慢に、これからも変わらぬ人気を博していくお店だと思います。

ニンニク醤油ベースのタレが絶妙に鶏肉とキャベツの旨味を引き立て、まさに絶品の美味しさ。焼き加減の変化も楽しむ。

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