万松寺

信長のエピソードも有名な、庶民に愛される寺。

大須商店街の真ん中にある、赤い提灯が印象的な万松寺。1540年（天文9年）、織田家の菩提寺として開かれました。織田信長の父・信秀の葬儀がこの万松寺で行われた際、喪主である信長が父の位牌に向かって焼香の抹香を投げつけたというエピソードもある寺です。当時の境内は非常に大きく、22000坪以上もあったそうですが、大正元年にその大部分を民衆に解放し、そこに今の繁華街や住宅街が作られました。「万松寺さん」と呼び親しまれ、民間信仰のお寺として愛されているのも、そんな理由にもよるのです。

訪れる人々の気持ちは変わらず、今も街とともに。

太平洋戦争末期の名古屋大空襲で焼失してしまい、現在の本堂は平成になってからやっと再建されたものです。5階建のビルのような本堂で、近代的な設備がたくさん設けられています。それだけに歴史の重みのようなものは感じられませんが、訪れる人々の気持ちは変わらず、今も街とともに歩んでいます。
一階部分の境内はほの暗く静かな雰囲気で、たくさんのお供え物は、地元の方の生活と密接に関わりがあるような寺である感じがします。夏の夕方、打ち水された石畳の上はひんやりと涼しく、境内のどこかで一匹の蝉が鳴くのだけが、不釣り合いなくらいに響いていました。

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