風来坊・手羽先唐揚げ

こだわりは今も、手羽先唐揚げの元祖。

今は名古屋メシの代表格として、全国的に知られる手羽先唐揚げ。その人気チェーンとして「世界のやまちゃん」とともにツートップを走っているのが「風来坊」です。両チェーンともに愛知県を中心に今では全国へ展開し、手羽先唐揚げのファンを広げています。味や特徴に両チェーンの違いは少しずつありますが、最も大きな違いは風来坊が手羽先唐揚げの元祖ということです。今では名古屋メシの代名詞とも言われるこの名物グルメは、風来坊初代のこだわりから生まれたメニューでした。

「手羽はし」のない、手羽先唐揚げ。

それまでも何度か風来坊に行ったことがありましたが、今回は栄店に。居酒屋風の1階もありますが、この日はカジュアルな内装が印象的な2階へ入店しました。その日の2軒目だったので、シンプルに手羽先唐揚げのみ注文します。ほどなく出されたので、ビールを片手にさっそくいただきます。
風来坊の手羽先唐揚げは、世界のやまちゃんとは少し違います。まず見た目。世界のやまちゃんでは「手羽はし」と呼ばれる、関節の先で先細っていく持ち手のような部分がありますが、風来坊ではこれがありません。食べられる身の部分が極端に少ない手羽はしは、あえて切り落としてあります。そうすることによって、味付けのムラがなくなるのだそう。

ハイペースで、どんどん進む。

食べ方にも特色があって、まず細い方の関節の先端を取り除き、少し骨が見えるように。それから逆側の関節を持って全部口の中に。それを歯で削ぎ取るように引っ張ると、あら不思議、スポンと骨だけが取り出せて、身は全て口の中に残ります。これが画期的に食べやすい。手羽先にありがちな、ちょっとずつ歯でむしり取るように食べるのではなく、最も簡単に丸ごといただけるのです。これは何か調理法にも関係があるのでしょうか。とにかく食べやすく、ハイペースでどんどん進めてしまいます。

外側のカリカリ感と、中身の柔らかさ。

風来坊の手羽先唐揚げは、低温と高温で二度揚げされています。そうすることで外側のカリカリ感と中身の柔らかい肉質の両方が実現できるのだとか。1ヶ月熟成させるという秘伝のタレと塩、コショウで味を整え、ゴマを纏わせます。そして完成された、まさにクセになる旨さ。味に関しては、スパイスがかなり効いた世界のやまちゃんに比べて、風来坊はマイルドです。だから世界のやまちゃんみたいにビールが進むというより、手羽先唐揚げそのものが進みます。
ちなみに世界のやまちゃん創業者はかつて風来坊の隣の居酒屋で働いていて、真似たくてもどうしても再現できずにスパイスを強めにして別路線で勝負することを選んだのだそうです。

廃棄される手羽先が、主役になった瞬間。

風来坊の手羽先唐揚げの誕生秘話は、興味深いものです。実は創業当初はこの名物メニューはなくて、「ターザン焼き」という、ひなどりの半身を丸ごと唐揚げにしてタレをかけた料理が看板メニューだったそうです。しかしある日ひなどりの仕入れがうまくいかず、代わりに手羽先で試したところ大ヒット。値段が張るターザン焼きより、その頃は廃棄するかダシを取る程度にしか使われなかった手羽先は安価で、たくさん食べられたのです。それ以来、瞬く間に名古屋名物にまで上り詰める大人気メニューとなりました。それまでは廃棄同然だった手羽先が、大都市の食の主役になった瞬間でした。

手羽先唐揚げ150本、19,800円。

「ターザン焼き」は今でもメニューにラインナップされていますし、手羽先より肉厚な「手羽元唐揚げ」、手羽先の骨を抜いて餃子の餡を詰めた「手羽餃子」、がっつり骨付きの「もも焼き」などなど、鶏肉の定番メニューがたくさん。他にも焼き鳥や一品も豊富なので、居酒屋としてほんとに使いやすいお店です。
でもやっぱり主役は手羽先唐揚げ。風来坊に来た誰もが、絶対に注文するメニューは手羽先唐揚げなのです。メニュー表には1本の値段から「手羽先唐揚げ150本、19,800円」という表記まで（！）あります。子供から大人まで、おやつから酒のアテまで、さまざまに愛されてきた逸品であることを、そのメニューが示しているように思えました。

アクセスマップ

詳細情報