善福院釈迦堂
ぜんぷくいんしゃかどう □和歌山県海南市
みかん畑に人知れず佇む、国宝のお堂。
旅を続けるうちいつしか、国宝の建物を巡ることも旅の理由のひとつになっていました。今ではかなりの数の国宝建築を見てきましたが、今までに訪ねた中でも最も無造作に人々の生活に溶け込み、そして最も自らが国宝であることを主張しない存在でした。それは和歌山にある、善福院釈迦堂です。かつてあった廣福禅寺という大寺の、5つあった子院のうち唯一今に残るものです。
集落と、みかん畑の狭間。
まず善福院釈迦堂へのアクセスに、大変驚きました。国道42号線から山側へ道を曲がると、すぐに山間の集落に。やがて道は狭く、車がすれ違えない幅になると、山の斜面にひしめく民家の合間を縫うように登っていきます。無秩序にカーブする登り坂の路地に、車の運転にも少々不安を覚えるほどです。
やがて急勾配の道のまま、少しだけひらけた交差点があり、その横に善福院釈迦堂の境内があります。ここより上は、もう山を覆うみかん畑しかありません。
鎌倉時代の建築で、禅宗様式の最古級の例。
集落とみかん畑の狭間。なぜ、こんな場所にあるのか。周りを見たら、みかん農家の作業小屋があってもいいような場所です。周囲に完全に埋もれるようなところで、国宝の釈迦堂は佇んでいます。境内と呼べるほどの敷地でもなく、塀に囲まれた狭い空間に釈迦堂があります。
しかしその建築は見事です。本瓦葺の寄棟造りで、横に長くどっしりとした印象。そのシルエットとは逆に柱間にも施された繊細な組物が、禅宗様式仏殿の典型として知られます。また鎌倉時代の建築で、禅宗様式の最古級の例として国宝に指定されたのです。
初期の禅宗様式として、貴重な文化財。
禅宗様式の国宝としては、以前に広島の不動院を訪ねたことがありました。不動院は戦国時代に建てられたもので、善福院とは違って入母屋造りの檜皮葺き。双方には約200年の差があり、善福院釈迦堂は初期の禅宗様式として非常に貴重な文化財とされているのです。
内部まで無料で見学できるのですが、この日は16時を超えていたので残念ながら入れませんでした。でも扉の格子戸から中を見ることができ、太い柱と瓦が敷かれた床が特徴的でした。
近づいてきた夜と、同化していく。
ここにあるのは釈迦堂だけです。見学を終えると、それほど長居したわけではないのに空の表情がずいぶん変わっていました。「秋の日はつるべ落とし」とはよく言ったもので、この一瞬にして1日は急に終わろうとしていました。来る途中は黄昏色に染まっていたみかん畑にも、群青色のベールが降りています。近づいてきた夜と同化していく善福院もまた、美しいものでした。
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アクセスマップ
詳細情報
名称 | 善福院釈迦堂 |
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所在地 | 和歌山県海南市下津町梅田271 |
問い合わせ先 | 073-492-2188 | 善福院 |
休業日 | - |
料金 | - |
駐車場 | - |
公式サイト | ー |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/善福院_(海南市) |
食べログ | ー |
トリップアドバイザー | https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g1023599-d20355000-Reviews-Zenpukuin-Kainan_Wakayama_Prefecture_Kinki.html |
LAST VISIT | 202311 |
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