先斗町歌舞練場
ぽんとちょうかぶれんじょう □京都府京都市
あらゆる想像を超える、近代建築の傑作。
鴨川を散策していると、三条大橋の近くにとんでもなく斬新な建築物があるのに気付きます。フランク・ロイド・ライトの帝国ホテルやヨドコウ迎賓館を一瞬彷彿とさせますが、すぐにそれとも違う個性的なデザインであることが感じ取れます。時期的にはまさにライトの建築がもてはやされた頃で、その潮流に乗ったのは間違いないでしょう。でもここは京都。しかもその中でも指折りの繁華街であり、京都五花街のひとつ先斗町。この場所にふさわしい意匠が試みられた建物は、他に類を見ない独創的なデザインを纏ったのです。
積み重ねられてきた、花街の伝統や誇り。
先斗町歌舞練場が建設されたのは1927年。芸妓や舞妓の稽古や教育を目的として、また日頃の鍛錬の成果を披露する場として建てられました。そろそろ100年が経とうとしている今も、現役でその役目を果たしているというから驚きです。このあたりの春の風物詩として親しまれている「鴨川をどり」は、普段はなかなか見れない花街の華やかな舞踊を楽しむ機会ですが、まさにその鴨川をどりの歴史を紡いでいるのがこの先斗町歌舞練場なのです。今回ここを訪ねたのは秋でしたから、鴨川をどりの笛太鼓を聞くことはありませんでした。でも特異な建築意匠と、積み重ねられてきた伝統や誇りを感じることは出来ました。
屋根の中央に置かれた、鬼瓦の形相。
まず先斗町側から歌舞練場を訪ねました。実はこちらが建物の正面になります。向かって右側に入口があります。入口の上の屋根には、誰がみても意味があって凄いものだと感じ取れる、大きな鬼瓦が載せられています。普通は鬼瓦って屋根の四隅にあるイメージですが、ここでは屋根の中央に置かれていて、その存在感たるや威容なものがあります。鬼瓦は中国の舞楽面を型取ったもので、睨みつける形相で歌舞練場を守っています。
入口から左側の壁は基本的な躯体は洋風なのですが、そこに施された和風の装飾がバランスよく調和し、他にはなかなか見られない特徴的な仕上げになっています。
誰もが思いつかないような、和洋折衷のデザイン。
壁面の大部分を占めるのは、茶系のスクラッチタイル。経年でより渋さを増した色です。腰壁(といっても人の背丈以上ありますが)の意匠はとても和を感じるもので、斜め格子にデザインタイルが埋め込まれていて、しかしよく見るとそのタイルには花柄の彫刻が施されており、和洋折衷の試みがよく見てとれます。また壁の上の方に目をやると、「先斗町歌舞練場」の切文字が大きく付けられています。壁面の色に相応しい渋めのゴールドで、その書体や質感などすべてが美しく先斗町という街に映えています。さらに切文字の上には3つの六角形の窓。誰もが思いつかないようなデザインが、見る者を魅了するのです。
奇抜な意匠なのに、先斗町に馴染む妙。
先斗町側を見ただけでも十分に衝撃的なのですが、鴨川側はもっと刺激的です。全体的には縦のラインを強調した洋館の雰囲気なのですが、そこに散りばめられた六角形や八角形の窓、斜め格子の柄や屋根瓦が日本的なイメージを感じさせます。かと思えば幾何学模様やテラコッタの装飾もあり、まさに華麗なる和洋折衷。さらに驚くことに、これほど突拍子もなく突き抜けたデザインなのに、周囲の先斗町の街並みには何の違和感もなく馴染んでいるのです。
設計は大阪松竹座や東京劇場を手掛け、劇場建築で名を馳せた木村得三郎氏。鉄筋コンクリート造で4階建ての先斗町歌舞練場は、当時「東洋趣味を加味した近代建築」と賞賛され、今も彼の傑作のひとつとして時代を超えて愛されています。
毎年5月、鴨川をどりが披露される。
先斗町歌舞練場では毎年5月、鴨川をどりが披露されます。約550席の観客席は満員になり、人々は艶やかな花街の舞に酔いしれます。今日は何も催されていませんでしたが、定期的に歌舞伎や邦楽邦舞の発表会、講演会、展示会なども行われており、内部を見る機会もあります。ビアホールが設置される時もあるのだとか。今度はぜひ、歌舞練場の伝統をより感じられる館内を体験してみたいと思います。
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アクセスマップ
詳細情報
名称 | 先斗町歌舞練場 |
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所在地 | 京都府京都市中京区橋下町130 |
問い合わせ先 | 075-221-2025 | 先斗町歌舞会 |
休業日 | - |
料金 | - |
駐車場 | - |
公式サイト | https://www.kamogawa-odori.com/kaburenjou/ |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/先斗町歌舞練場 |
食べログ | - |
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