比叡山延暦寺・西塔

ひえいざんえんりゃくじ・さいとう　□滋賀県大津市

静寂に包まれる、神秘的な世界観。

比叡山の山全体が境内である延暦寺で、大きく3つに分かれたエリアのうち、中枢である東塔から1kmほど離れた場所にある2つめのエリア、西塔。最澄に直接師事した第２世天台座主・寂光大師円澄によって開かれた区域です。東塔とは打って変わって静けさに包まれていて、深い森の真ん中に埋もれるようにして諸堂が点在しています。延暦寺の3つのエリアの役割で、過去現在未来の「過去」の場。東塔の大講堂で教えてもらったことを胸に、西塔を訪ね歩きました。

鳥の声だけが、木々の間を縫って響く。

大きな駐車場のわりには、西塔の入山ゲートは小さいです。すぐに下り坂になっていて、50mも歩けば完全に森の中。東塔のような観光名所的な施設は全く存在せず、森の中にただお堂とそれらを結ぶ道だけがあります。だからとても静か。鳥の声だけが木々の間を縫って響きます。新緑の季節でしたので、視界全体が緑のフィルターを通したような色、マイナスイオンが満ちあふれた感覚で、これはもう誰が何と言おうとハイレベルな森林浴です。

威厳に満ち堂々たる、本堂の釈迦堂。

そんな西塔での見どころですが、まずは西塔の本堂である釈迦堂です。転法輪堂とも呼ばれ、1595年に再建されたもの。実はそれより以前から麓の三井寺にあった弥勒堂（1347年建立）を、織田信長の比叡山焼き討ちのあとに移築したものです。延暦寺で最も古い建物で、国の重要文化財になります。釈迦堂の前には大きな広場があり、その周囲を杉の大木が囲み、独特の雰囲気が漂います。釈迦堂は非常に大きなお堂で、威厳に満ち堂々たる佇まい。こんなに巨大なのに、釘は一本も使われていないそうです。本尊は秘仏とされている釈迦如来立像で、根本中堂と同じように内陣は段差があり、人の目と同じ高さに仏様がいるように造られています。ここでも最澄の「仏凡一如」の考えが実践されているのです。

動のにない堂と、静の浄土院。

釈迦堂の手前に、にない堂とよばれるお堂があります。常行堂・法華堂という全く同じ形をした二つのお堂が渡り廊下で繋がっており、ニ堂を合わせてにない堂と呼ばれます。その形が天秤のようで、弁慶がになう（担ぐ）担ぎ桶に見立ててそう呼ばれるようになったそうです。いずれも1595年再建のもので、歴史の重みを刻み込んだ表情をしています。それにしても左右対称で繋がっているシルエットが個性的で、個人的には西塔で一番印象に残っている建物です。
また西塔エリアの中でも少し歩きますが、浄土院も有名です。ここは比叡山を開いた伝教大師最澄の御廟なのです。だから延暦寺の中でも最も神聖な場所とされており、その美しさと静寂は別格のものがあります。今も十二年籠山という修行が行われていて、敬虔な僧によって大切に守られているのです。裏手に回ることもでき、そこにもいくつかのお堂があります。ちなみに浄土院は西塔から歩く方が近いのですが、エリアとしては東塔に属するそうです。

焼き討ちを生き延びた、唯一の瑠璃堂。

それともうひとつ、これは以前ドキュメント番組で見てから、ぜひ訪ねたいと楽しみにしていたお堂があります。それは瑠璃堂という建物。西塔エリアから道路を渡り、10分ほど歩いた場所にあります。案内看板などがなく分かりにくかったんですが、無事到着。他には誰もいない、静かな瑠璃堂。室町時代の建立で、実は瑠璃堂は信長の焼き討ちを逃れた、延暦寺で唯一の建物なのです。内部は非公開ですが、とにかく外観だけでも見てみたかった。山の急斜面に少しだけ開けた場所で、今もぽつんと佇んでいます。

西塔にあるのは、山寺の真髄。

とにかく山寺の真髄を感じられた西塔。なぜこんな山奥に作られたのか、それさえ理解できるくらいの静寂。西塔では一般の方も修行を体験できる居士林という研修道場もあります。数年前の台風被害により現在は実施されていませんが、もっと比叡山延暦寺のことを理解するために、いつか参加できればと思っています。

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アクセスマップ

詳細情報

名称	比叡山延暦寺・西塔
所在地	滋賀県大津市坂本本町4220
問い合わせ先	077-578-0001 ｜比叡山延暦寺総務部
休業日	年中無休
料金	共通券　大人￥1,000・中高生￥600・小学生￥300
駐車場	無料駐車場
公式サイト	https://www.hieizan.or.jp/
wikipedia	https://ja.wikipedia.org/wiki/延暦寺
食べログ	-
トリップアドバイザー	https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298202-d321090-Reviews-Hieizan_Enryaku_ji_Temple-Otsu_Shiga_Prefecture_Kinki.html
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