ゼー六

初めて食べたのに、懐かしい味「アイスもなか」。

八百八橋と呼ばれた大阪。その中でも現役で最も古い橋が、大正2年に架けられた本町橋です。完成した当時は珍しい鉄橋であり、優美な石の装飾が美しい橋でした。今では頭上を阪神高速の高架が走り、そこに橋があることすら見落としてしまいそうなくらいですが、東横堀川をまたぐ全長46mの短い橋は今も交通量が多く、商都大阪のビジネス街を支える重要な橋です。
そして本町橋の完成と時を同じくして橋のたもとに店を構えたのが、自家焙煎のコーヒーと自家製のアイスクリームの店、ゼー六です。創業が大正2年になりますから、かなりの老舗。建物も古く、周囲の現代的な高層ビルの只中にあっては珍しい木造の一軒屋なのです。白い暖簾がビルのすきま風に揺られ、過ぎた時間を大切に抱いたままひっそりと佇んでいます。

本町通に木造一軒家で営業する「ぜー六」。創業が大正2年というかなりの老舗。

優しい甘味と、ミルクの風味が絶品。

もともとは「ゼー六三十日堂」という和菓子屋だったそうですが、今はこだわりの喫茶店。そして今も昔も変わらないゼー六の名物が、自家製のアイスクリームを使った「アイスもなか」です。六角形の皮に刻まれた「ゼー六」という文字が風流で、パリッという食感がたまりません。そしてその中に包まれたアイスクリームは完全にオリジナルな存在感。アイスクリームとシャーベットの中間のような絶妙な味と、言葉ではうまく説明できないくらい独特のシャリシャリ感が特徴です。上品な甘さというか、素朴な甘さというか、優しい甘味とミルクの風味が絶品。行列ができることもしばしばですが、一度前を通ってしまうと思わず足を止め、真夏の炎天下でも並んで買いたいとっておきのアイスもなかです。

あっさりした「アイスもなか」と一緒に味わうこだわりのコーヒーも名物。レトロな食器がまた味わい深い。

何もかもが、「昔ながらの」喫茶店。

アイスの持ち帰りコーナーが人気の中心ですが、ゼー六の基本は喫茶店。店内も歴史を感じさせる雰囲気で素敵ですし、さらにコーヒー200円という超良心的プライス。そして絶対にいただいておくべきなのが、その名もシンプルに「クリームコーヒー」。アイスコーヒーに人気のアイスクリームをトッピングしたもので、まさにゼー六ならではの一杯です。アイスクリームのサッパリした甘さと香り高いコーヒーの出会いはまた格別です。これも驚きの330円。何もかもが「昔ながらの」喫茶店、ゼー六には完全に脱帽です。

店内も歴史を感じさせる雰囲気で素敵。食器や調度品など何もかもが「昔ながらの」喫茶店。

店頭の趣きある木の看板。

店内は時間が止まったようにノスタルジック。

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