宇宙軒食堂

金沢B級グルメ代表、トンバラ定食。

その風変わりな店名から、今風のちょっと小洒落たカフェかなにかを想像してしまいましたが、実際は古くから金沢の繁華街・片町の裏通りで営業する大衆食堂。それもどっぷりと昭和の時間が流れるザ・食堂といった感じのお店です。金沢B級グルメの代表と呼ばれる存在感がたっぷり漂っています。
昼間も日差しがやっと入るくらいのビルの隙間の細い路地、雑居ビルの一階に店を構える宇宙軒食堂。ビルの奥に伸びた薄暗い廊下の先に、小さな入口に小さな暖簾が掛かっています。
店内は年代を感じさせる雰囲気で、昭和の臭いがぷんぷんする情緒的なムード。先客は年配の男性がふたり、それぞれに昼間からビールを片手に肴をつまんで、テレビのプロ野球中継を睨んでいます。いかにも時代を感じさせる空気感、そして都市の片隅の脱力感。

古くから金沢の繁華街・片町の裏通りで営業する大衆食堂で、名物の「トンバラ定食」をいただく。

ビルの奥に伸びた薄暗い廊下の先に入口がある。

一瞬メニューかと思えば「1日目標500食」。

店内は賑やかさと憂いが同居する、一種独特の雰囲気。

のっけから宇宙軒食堂は強烈なインパクトで迎えてくれます。その後は若者グループやカップルも続々と店にやってきて、店内は賑やかさと憂いが同居する、京都の京極スタンドのような、一種独特の雰囲気。でもそこにはどこか家族的なあたたかさが感じられ、カウンター席に囲まれた厨房で調理する店員さんたちとの肩肘張らないコミュニケーションは、この店がずっと、色々な世代の人たちに愛されていることを感じさせてくれます。
座席は厨房をコの字に囲むカウンター席のみ。その中央に大きな鉄板があり、炒め物は全てその鉄板で調理されます。そしてその中でも老若男女を惹き付けているものは、宇宙軒食堂の看板メニュー、トンバラ定食。真っ黒に使い込まれた大きな鉄板に一枚一枚を並べて、豚バラ肉があっという間に焼かれます。

コの字型のカウンター席のみで、その真ん中には大きな鉄板。「トンバラ」はその鉄板で調理される。

深く一体感のある旨味、金沢にトンバラ定食あり。

定食然としてご飯と味噌汁が一緒に出されます。豚のバラ肉には、やや酸味のある特製のタレをつけていただきます。その秘伝のタレが絶品。ちょっと酸味があり、味噌風味の味わいがあり、若干のピリ辛があり、かなり複雑な成り立ち。豚肉とのその相性といえば抜群で、豚の旨味がこれでもかと強調されます。シンプルな組合せだけどその深く一体感のある旨味は、何度食べても飽きない魔法の方程式。一口食べてどこか懐かしく、二口食べて箸が止まらなくなり、店を出たらまたもう食べたくなっているような、不思議に引き付けられる逸品です。金沢にトンバラ定食あり。一日に500食という人気ぶりにも納得のメニューでした。

焼いた豚バラ肉を秘伝のタレに漬けていただく。豚の旨味がこれでもかと強調され、食べ出したら止まらない美味しさ。

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