青森・そばめし/すじ焼き
あおもり・そばめし・すじやき □兵庫県神戸市
本家は別次元、神戸そばめし発祥の名店。
長年阪神間に住みながらも、どういうわけか味わう機会がなかった「そばめし」。2000年台前半くらいから全国的な知名度が出始め、一時はコンビニ弁当のメニューにも登場しました。もちろん地元神戸では昭和30年代から親しまれているザ・ご当地グルメであり、今回はその真髄を確かめに、長田区にあり「そばめし」発祥と言われる店、青森を訪ねました。
持ち込みの白飯から、地元の名物料理に。
そもそも「そばめし」とは、焼きそばとご飯をソースで炒めた鉄板料理で、お好み焼き店で作られるメニューです。1957(昭和32)年創業の青森では、周辺に多かった労働者の常連からのリクエストでそばめしが生まれたそうです。というのも彼らが冷ご飯を店に持ち込んで、焼きそばと一緒に焼いてくれということが発端らしく。確かに当時は電子レンジなんかない時代、どうせ熱々のお好み焼きを食べるなら、冷ご飯も鉄板で焼いて温めてほしくなるのは当然かもしれません。
しばらくはそのように、持ち込みの白飯のみ調理していたそうです。言わば裏メニューとして。しかし晴れて正式なメニューとして昇格し、今では店の、いや地域の名物料理として人気を博しているわけです。
調理される様子を見て、楽しみながら。
土曜日の開店10分後くらいに着いたのですがすでに満席。店の奥に待ち合いスペースがありますが、そこも満員で店外でしばらく並びました。結局食べ始めるまではちょうど1時間ほど待ちましたが、店外にいる時から食欲をそそるいい匂い楽しみながら過ごしていました。
店内には中央に大きな鉄板があり、三方を囲むようにカウンター席が9席ほど。他にテーブル席が2つありますが、鉄板付きではありません。今回はカウンター席に座れたので、次々と手際良く調理される様子を見て楽しめました。
鉄板の上の鍋には、青森独自の「ぼっかけ」。
鉄板の上に、鍋が無造作に置かれていました。その鍋には、お好み焼きに、そばめしに、必ずと言っていいほど投入される「ぼっかけ」が入っていて、常に温められているのです。「ぼっかけ」とはいわゆる「すじこん」なので、牛すじとこんにゃくを甘辛く煮たものなのですが、青森のすじこんは特徴的です。牛すじはすべてミンチになっていて、こんにゃくもかなり小さく刻まれています。まるで肉味噌のような見た目。牛すじがそのままだと噛み切れない人もいるからと、創業当時からこのスタイル。仕入れ時に肉屋でミンチにしてもらっているそうです。鍋の蓋を開けた時に、毎回立ち昇る湯気が美味そうでたまりません。
青森の1番人気、「すじそばめし」。
さて、注文したのは「すじそばめし」。青森の1番人気。さっそく鉄板の上でサクサク焼かれる様子を見つめます。まずは白飯とそばを。油は引いていないのが意外でした。両手のヘラでそばを細かく切りながら、白飯とそばが焼かれます。ヘラと鉄板がカチャ、カチャ、カチャという小気味いい音を立てて、リズミカルに。やがてぼっかけ、キャベツも投入され、さらに細かく刻みながら焼いていきます。そばめしを作る時は強火にしているようで、目の前の鉄板も確かに熱気を帯びたのが分かりました。最後にソースを投入。色が付いたような湯気がモワッと上がり、香ばしい匂いが一気に充満。鉄板の上をツーっと移動して、目の前に置かれて完成です。
絶妙なパラパラ感と、ふんわり感。
今までもどこかで、そばめしを食べたことはあります。でも青森の、本場のそばめしは全く次元の違う絶品でした。具材は見事なまでに米粒くらいまで刻まれていて、小皿と一緒に出していただいたスプーンでいただきます。そして一口食べた瞬間から、その絶対的な美味しさの虜になってしまいました。
パラパラ感とふんわり感が入り混ざった、絶妙な食感。炒飯に近い感じがします。そして自慢のぼっかけから滲み出した旨味。しかもミンチなので一口ごとに一定量が口に入り、満遍なくその美味さが楽しめます。キャベツの甘み。そして地元長田で作られる「ばらソース」の風味が、鼻腔と喉を支配してゆきます。まさに、本家の底力でした。この旨さには完全にノックアウト。また明日も食べたいくらい、病みつきになりそうです。
旨味が凝縮された、「かすすじ焼き」。
それと、そばめしと一緒に食べたかったのが「すじ焼き」。簡単に言うと、ぼっかけを入れたお好み焼きです。それに油かすも入れた「かすすじ焼き」を、今回は注文しました。油かすとは牛の小腸から油脂を抽出した後の残り物で、大阪のかすうどんや静岡の富士宮焼きそばには欠かせない食材。ホルモンの旨味が凝縮されています。
これも目の前で調理を眺めます。薄く引いた生地にキャベツ、天かす、魚粉、ぼっかけ、油かすを順番に乗せて、最後に生地をかけたらひっくり返してあとは待つだけ。最後に甘口か辛口か、好みを伝えたソースと青海苔、そしてなぜか味の素をセルフでかけていただきます。マヨネーズは昔から置いてないそう。それによく見てると、そもそも生地に卵は使っていないのも特徴です。
噛むほどに、濃厚な風味。
そしてこの「かすすじ焼き」も、自分史上に残る絶品の旨さ。全体的に広がったぼっかけの旨味とコクが、生地の風味とキャベツの甘みに見事に融合しています。さらに油かす。これが何とも言えない絶妙な食感で、噛むほどに濃厚な油の風味が滲み出してくるのです。そう言えば途中にヘラで生地全体をギュッと押さえつけた時に、真ん中あたりからジュワッと飛び出てきたのは油かすからの油。これが全体に行き渡っていて美味。さらにこの油のおかけで、生地の表面がカリカリになっているのもまた絶品。香ばしさが最高潮まで高められていました。
ちなみにかすすじ焼きは鉄板から直接、小さなヘラでいただきました。いつまで経っても熱々。最高のご当地グルメを楽しみました。
モットーは、昔からの味を変えないこと。
持ち帰りの注文もひっきりなしに入っているようで、持ってきた自宅の皿と注文を書いた紙を窓口に黙って置くだけで、焼き上がりを見計らって勘定を払っているお客さんもいました。
青森はとにかく下町情緒溢れるお店。店の方も気さくで明るく、そして気配りもお見事です。延々と焼きの作業がある中、細やかなおもてなしの心が感じられます。観光客も、地元の方々も、これでは何度も訪れてしまいたい気持ちになるわけです。
昔からの味を変えないこと、それが青森のモットーだそうです。これからもこの味を守り、いつまでも続けてほしい名店でした。
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アクセスマップ
詳細情報
名称 | 青森・そばめし/すじ焼き |
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所在地 | 兵庫県神戸市長田区久保町4-8-6 |
問い合わせ先 | 078-611-1701 | 青森 |
休業日 | 火曜日 |
料金 | - |
駐車場 | - |
公式サイト | ー |
wikipedia | ー |
食べログ | https://tabelog.com/hyogo/A2801/A280110/28000773/ |
トリップアドバイザー | https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g298562-d3752309-Reviews-Aomori-Kobe_Hyogo_Prefecture_Kinki.html |
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