カツヤ・とんかつカレー

3年寝かせた、超熟成カレー。

1959年創業の老舗カツヤは、大阪難波で長らく愛されてきた「とんかつカレー」の名店です。元祖とんかつカレーと謳っていて一部ではカツカレー発祥の店と言われたりしますが、カツカレーは1918年に東京の「河金」が初めて提供したらしいので、発祥とまでは言えないかもしれません。しかしそんなことはどちらでも良いと思えるほど、カツヤのとんかつカレーの美味しさは衝撃的でした。今まで食べたカレーでNo.1に推したいと思います。

移転して、小さなビルの2階に。

難波で四つ橋筋を歩いて難波八阪神社に向かっていた時に、大きな赤い看板が目に留まりました。矢印で町の奥に誘導してあるので、思わずその方向に向かいます。実はこの時、まだカツヤというお店を知りませんでした。なんとなく、看板だけで名店の雰囲気を感じたのです。歩きながら調べていると、どうやら最近移転した模様。しかし以前と1ブロックほどしか変わらず、だいたいの方向は合っているようです。
以前は昭和レトロ満開の味のある店構えだったみたいですが、今は小さなビルの2階に移っていて、ちょっと見つけにくい感じです。

学校の食堂みたいに、さっぱりとした店内。

入口ドアを開けるとすぐに階段になっています。踊り場にはお祝いの胡蝶蘭が並んでいて、移転はごく最近だったようです。階段を上がった2階の店内は広めで、明るく綺麗な、しかし学校の食堂みたいにさっぱりとしたイメージ。以前の店内を知らないですが、昔からの常連なら少し寂しい気持ちになるかもしれません。
やや換気が良くないのか、店内には調理場からの煙が漂っていました。すごく美味しそうないい香りなんですが、服に付いてしまいそうなので女性の方はちょっと注意かも。

見た目は、超オーソドックスなカツカレー。

さて肝心のとんかつカレーですが、メニューが非常に豊富です。カツに使う肉の部位や具材も数種類、さらにトッピングもあるので選ぶのに迷ってしまいます。でも今回は初めてだから、最も基本の「とんかつカレーA」を注文します。ほどなく到着しますが、見た目は超オーソドックスなカツカレー。ですが皿に印字してある「元祖とんかつカレー カツヤ」の掠れた文字、これだけで特別感が出ています。

時間と手間が、醸し出した味。

そしてカツヤのカレーですが、劇的に美味しいです。旨味がかなり濃く、口の中に広がる香りとコクがとても強いです。玉ねぎ・人参・セロリを長時間じっくり炒め、丁寧に丁寧に煮込まれた、まさに時間と手間が醸し出した味だと直感します。主張してくるような表面的な辛さはなくて、その深い深い旨味の中から滲み出してくるようなカレー風味です。それでいてしつこさがないというか、後味がスッキリした独特の食べやすさがあります。
とんかつも薄手に揚げられていて、カレーと一緒に食べるときの絶妙なバランスがしっかり考えられています。サクサクの衣がカレーのに浸かってもなお食感を維持しています。

一度食べたら、やみつきになる。

食べ終わったあとでカツヤのレビューを見ていたら、衝撃の事実を知りました。野菜をペースト状になるまで炒めた後、密閉してなんと3年間も寝かせているんだそうです。長い年月をかけてようやく提供される、途方もない手間暇がかかった逸品なのです。単にカレーにカツを乗せるのではなく、乗せることを前提としてルーの開発に取り組んだということで、そういう意味ではまさに元祖であるし、どこにも負けない強い信念を実感したのです。
とにかく一度食べたらやみつきになる、カツヤのとんかつカレー。個人的には、もう他のカレー店では満足できないかもしれない。それくらい、繰り返し食べたくなる味でした。

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