京都市京セラ美術館
きょうとしきょうせらびじゅつかん □京都府京都市
伝統と革新が共存する、帝冠様式の建築美。
岡崎公園に堂々たる姿で君臨する、巨大な和洋折衷建築があります。平安神宮へ誘う大きな赤鳥居の横に、その正面に立つと視界のほぼ全てを覆い尽くしてしまうほどの壮大な建物。帝冠様式と呼ばれる、洋風建築に和様の屋根を冠した建築様式で、1930年代に盛んに造られた意匠です。神奈川県庁や名古屋市庁などと並んでその代表的な建築物のひとつであるのが、この京都市京セラ美術館です。1933年に日本で2番目に開館した公立の美術館で、1977年に東京都美術館が解体されてからは現存する国内最古の公立美術館となっています。
両翼120mもある、ダイナミックな帝冠様式。
ほんとに壮大な建築物で、正面から見た両翼は最大で約120mもあります。全体的には黄色っぽいレンガで覆われた洋風のファサードですが、最上階と屋根は和を感じさせる意匠。また細部に施された装飾物も和様が見られ、ダイナミックな和洋折衷である帝冠様式をよく表しています。
実は以前も訪れたことがあり、その時から大きく変わった点がありました。それは地上1階にあった正面玄関が廃止され、美術館の入口は地下に変更されているのです。建物前の広場が大きく掘り下げられ、地上からは階段もしくはスロープを降りたところがメインゲートです。それまでの正面玄関はそのまま残されていますが、宙に浮くような形で入ることは出来ません。もはや外観の意匠として存在するだけとなっているのです。
ガラスリボンと呼ばれる、開放的なエントランス。
新たな入口部分は、掘り下げられた面が全部ガラス張りとなっていて、「ガラス・リボン」と呼ばれるスタイリッシュな空間になっています。向かって左側がショップ、右側はカフェとして使われています。地階ですがガラスのカーテンウォールからはたっぷりの日差しが入り、とても明るい空間になっています。その中央にチケットカウンターが並びます。かつてここは地下室だったところ。そこから中央階段を上がると、現在の京都市京セラ美術館の心臓部とも言える巨大なホール空間があります。
館内のハブとして機能する、巨大な吹き抜け空間。
天井の高さは建物の高さそのものとも見える巨大な吹き抜け空間。ここは圧巻の迫力で、ホールを中2階の回廊が取り巻いています。現代的な螺旋階段もアクセントに。このホールは旧大陳列室と呼ばれ、以前は展示も行われた場所でした。しかしリノベーションされて以降は美術館のハブ空間として、正面入口と南北の展示室、また建物裏側の庭園や東山キューブと呼ばれる新館を結んでいます。美しい白壁の空間、最上部には光を取り込む窓が並び、ヨーロッパの教会の雰囲気さえ感じられます。
古い建築物独特の、ゆったりした空間で。
京都市京セラ美術館では明治以降の京都を中心とした日本画、洋画、彫刻、工芸など約3,800点を収蔵し、常設展示も楽しめます。しかし全国的に話題の展覧会もしばしば催され、時には大行列になることも。展示室の天井も高く、古い建築物独特のゆったりした空間で作品を鑑賞できます。この日はマリー・サンローラン展を。すごくリラックスして鑑賞できた気がします。企画展の入口部分は昔は中庭だったところ。今はガラスの大屋根が付けられ、「光の広間」と呼ばれる空間に。元々の建物の外壁が今は空間の壁面になっていて、ちょっと独特の雰囲気が魅力です。
大理石のT字型階段や、幾何学模様のタイル。
館内は綺麗にリノベーションされてからは明るく洗練された印象が強いですが、一方で昔からの内装もほぼそのまま残されているのも魅力です。例えば元々の正面玄関を入った吹き抜けの空間は特に見事で、重厚感あふれる大理石のT字型階段や幾何学模様のタイル、カラフルなステンドグラスが天井に設えられていたり、歴史ある建造物の実力が存分に発揮されています。全体として感じる石の温かみは、この場に身を置いてみないと分からない特別なものです。まさに建築美を感じる空間でした。
伝統と革新を、具現化した建築物。
ちなみに大幅なリニューアルが完了したのが2020年。その前年から、それまでは京都市美術館と呼ばれていたこの建物は、京都を代表する大企業京セラがネーミングライツの権利を得たことにより、京都市京セラ美術館と呼ばれることになりました。その期間はなんと50年。50億円という命名権の使用料はリニューアルの建築費約100億円の半分に費やされたという、とてもスケールの大きなスポンサードなのでした。
2015年に登録有形文化財に指定された建物は、建築から100年を迎えようとしています。まだまだ後世に引き継いでいくべき、まさに伝統と革新を具現化した建築物です。
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アクセスマップ
詳細情報
名称 | 京都市京セラ美術館 |
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所在地 | 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124 |
問い合わせ先 | 075-771-4334 | 京都市京セラ美術館 |
休業日 | 月曜日 *祝日の場合は開館/年末年始(12月28日〜1月2日) |
料金 | - |
駐車場 | - |
公式サイト | https://kyotocity-kyocera.museum/ |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/京都市美術館 |
食べログ | - |
トリップアドバイザー | https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298564-d1188671-Reviews-Kyoto_City_Kyocera_Museum_of_Art-Kyoto_Kyoto_Prefecture_Kinki.html |
LAST VISIT | 202306 |
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