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浄瑠璃寺 浄瑠璃寺

浄瑠璃寺

じょうるりじ □京都府木津川市
公式HPwikipediaトリップアドバイザー食べログ国宝
オススメ度

数々の国宝を擁して、壮観なる名刹。

9体の阿弥陀如来像が一列に並ぶという、九体阿弥陀堂。極楽浄土に往生するにも9種の階級があるとする「九品往生」という考えを具現化した世界観です。平安時代後期に隆盛したという様式ですが、今では日本で唯一完全な形で残っているのが浄瑠璃寺です。そのあまりにも独特で、そしてあまりにも厳かな世界観は、初めて訪ねた私にとっては衝撃的でした。時空が語りかけてくる、しかし全く音の無い言葉は、何よりも静寂であり、そして圧倒的なものでした。

浄瑠璃寺

平安時代に表現された、東方浄瑠璃世界。

本尊である九体阿弥陀仏・薬師如来の住む「東方浄瑠璃世界」から、寺号を浄瑠璃寺とされましたが、先述のことから別に九体寺(くたいじ)の通称も持ちます。京都の最南端部にありますが、歴史的にも興福寺西大寺の末寺であったり、また奈良の僧が修業に赴いた歴史があるなど、どちらかと言えば奈良との結びつきが強い地域になります。8世紀頃に行基により開山されたと伝わりますが、浄瑠璃寺が現在のような伽藍になったのは1047年、義明上人によるものとされます。以来変わらずこの地で歴史を紡いできました。

浄瑠璃寺

梅と馬酔木が美しい、早春の参道。

車でないとアクセスしにくい場所にありますが、路線バスのバス停もあり、いずれにしてもそこから歩いてすぐのところに浄瑠璃寺の境内があります。参道沿いには様々な植物が植えられていて、この日は梅と馬酔木が美しい花をつけていました。山門は小さく素朴なもので、門構えで切り取られた西日が境内から漏れ出てくる様子が印象的です。
山門を抜けると正面に池を中心とした庭園があり、右手に本堂、左手の山腹には三重塔が見えます。またその全てを取り囲むように森が茂り、ここが浄瑠璃寺の特別な空間であることを演出しています。外界とは隔絶された、内なる世界であることを。

浄瑠璃寺

1107年再建の本堂は、九体阿弥陀堂とも呼ばれる。

まずは浄瑠璃寺の本堂のことを紹介せねばなりません。本堂は1107年に再建された非常に古い建物で、国宝。またその役割から九体阿弥陀堂とも呼ばれています。正面から見ると横に長い建物で、9つの扉がついています。真ん中の1つだけがやや大きく、他の8つは全て同じ大きさ。そして予想通りその9の扉の向こうそれぞれ本堂内の空間に、9体の阿弥陀如来像が並んでいるのです。
拝観料を本堂右側の受付で納めて、本堂の縁側を反対側まで歩いてから中に入ります。本堂の中は、まるで別世界です。電灯は必要最低限で、障子戸から入ってくる淡い自然光で拝観するようになっています。夕方の堂内は限りなく静寂で、この空間で発せられる音は全くありません。唯一外から聞こえてくるのは、誰かの玉砂利の足音と、境内に多い猫の鳴き声。静謐の中、浄瑠璃寺の至宝たる仏像群を拝観します。

浄瑠璃寺

時空を超えた世界、9体の阿弥陀如来像。

まずは九体寺の由来にもなっている、国宝・阿弥陀如来坐像9躯。この時は2体が修復中でしたが、しかしそれでも7体の大きな阿弥陀如来が並ぶ様子は圧巻の一言。いずれも平安時代の作とされます。当時京都では盛んに9体の阿弥陀如来像が作られたようですが、完全な形で現存するのはこの浄瑠璃寺ただ一寺。さて、時空を超えた仏像の世界にいよいよ浸ります。
9体のうち中央の阿弥陀如来像だけは他よりも大きく、背中にある光背も特別なもの。そこには1000体の仏と4体の飛天が表出されています。放たれるオーラは圧倒的。こちらの魂までもを吸い込んで、まるで私は仏様の世界と一体と成されてしまったように。これこそが私が体感したいものであり、仏像を拝観する目的なのだとあらためて感じさせていただく瞬間です。約1000年もの時を超えて、何らかの同じものを共感できているのだと思えるのです。

浄瑠璃寺

国宝の四天王立像、秘仏の吉祥天立像。

他にも本堂内には見るべき仏像が多くあります。入口付近で最初に拝観できるのは、国宝四天王立像・4体のうち2体。残りの2体は東京と京都の国立博物館で寄託されており、浄瑠璃寺本堂では持国天・増長天を拝むことが出来ます。平安時代の傑作とされ、前後に並び立ちます。激しさと柔和さを併せ持つ独特の表情で、また今にも動き出しそうな作風は必見です。
他にも国の重要文化財である仏像が目白押し。厨子に納められた吉祥天立像は平安時代の作。美と幸福の女神として知られ、優美な立ち姿と当時の豊かな彩色がよく残されています。限られた期間のみ開帳されますが、この日は見ることは出来ませんでした。

浄瑠璃寺

珠玉の仏像群を、大きな須弥壇が支えている。

さらには地蔵菩薩立像。こちらも平安時代から浄瑠璃寺に安置されていつ古仏であり、柔和な表情を湛えて語りかけてきます。
これらの仏像群を大きな須弥壇が支えています。浄瑠璃寺には手書きの解説が随所にあるのですが、須弥壇に関する記述もとても興味深く、じっくりと時間をかけて鑑賞するべきことが分かります。それによるとこの須弥壇には魔除けの装飾が施されていて、よく見ると様々な特徴的な形をした金具が多数取り付けられています。そのひとつひとつが意味深で特殊な紋様のようで、とても印象的的です。

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夕日に染まる国宝・三重塔を、水面に映して。

まだ見どころがあります。本堂から池を挟んで向かい側、少し小高い場所にある三重塔。朱塗りが鮮やかな塔で、この時は西日を浴びてより一層その赤みを増しているようです。平安時代末期に洛中から移築されたもので、国宝に指定されています。内部には創建当初の本尊とされていた薬師如来像(こちらも国の重要文化財)が安置されていて、浄瑠璃寺の壮大な歴史を感じます。池のほとりにさり気なく立つ石灯籠さえ、国の重要文化財として貴重なものなのです。
境内の中央にある池には弁才天を祀る祠が置かれ、境内全体がこの池を中心として浄土式庭園となっています。静かで鏡のような水面には、見る方向によって本堂や三重塔が映ります。同時に豊かな緑や空も映り、まさに絶景。時折亀や鯉がその風景を横切り、この絶景に動きを与えています。そして、春が来たことを告げています。

浄瑠璃寺

古刹を我が物に、自由気ままな猫たち。

浄瑠璃寺の境内にはなぜか猫がたくさん暮らしています。池の水辺で遊んだり、何の悪びれもなく本堂の縁側や屋根の上を歩いています。どの猫も人懐っこくて、癒されます。境内には春の花々が咲き始めていて、猫たちも新しい季節の訪れに気付いたのか、どこか安心してあちこちに歩いているようです。でも貴重な建物で爪磨きなんかしないのか、ちょっと心配になります。
夕方の浄瑠璃寺でした。1日が終わろうとしている時間帯、この上なく静かな世界。無垢な自然の中で、あまた見える国宝の数々。底知れぬ壮大な魅力が、浄瑠璃寺には溢れていました。

浄瑠璃寺

photo.

アクセスマップ

詳細情報

名称 浄瑠璃寺
所在地 京都府木津川市加茂町西小札場40
問い合わせ先 0774-76-2390 | 浄瑠璃寺
休業日 無休
料金 本堂 400円
駐車場 有料駐車場
公式サイト -
wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/浄瑠璃寺
食べログ -
トリップアドバイザー https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g1023403-d1747323-Reviews-Joruri_Temple-Kizugawa_Kyoto_Prefecture_Kinki.html
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