月ヶ瀬梅渓
つきがせばいけい □奈良県奈良市
風格と梅花が競演する、歴史ある絶景の梅林。
風光明媚な谷を背景に、咲き誇る梅の花。春の訪れを祝うかのように、3月の月ヶ瀬は景色を埋め尽くすほどの梅の花に満たされます。約13,000本もの梅が、谷から続く山の斜面に一斉に咲き誇ります。古くから絶景の梅林として知られており、1922年に国が最初に指定した名勝のひとつに数えられます。同じタイミングで名勝とされたのが奈良公園、兼六園といいますから、月ヶ瀬梅渓の文化的価値がよく分かります。我が故郷、奈良では随一の梅林として有名ですがなかなか訪ねる機会がありませんでした。この度ようやく、念願叶って訪問。そのあまりの美しさに酔いしれる1日になりました。
風流な梅渓の象徴、月瀬橋。
月ヶ瀬梅渓。以前は月ヶ瀬梅林と呼んでいたと思います。いつからか呼称が変わったのかどうか。この地域を流れる五月川沿いまで来ると、そんな疑問はすっかり忘れてしまうほどの絶景が広がっていました。中心地には月瀬橋という鉄橋が架かっていて、景色の中ではひとつの象徴的な役割も担っています。その橋のそばに月ヶ瀬梅の資料館があり、近くの駐車場に車を停めました。聞けば有名な梅林はここから20分ほど歩いた山の上にあるとのこと。実は車で遠回りをすれば山登りをせずに山頂の梅林エリアに行けたのですが、それをリサーチしないままだったので、険しい坂道を歩いて登ることになりました。
春がやってきたことを、実感しながら。
この坂道が思いのほか大変で、急坂がつづら折りになって延々と続いています。この坂道は「代官坂」と呼ばれます。標高差で約100mほど上ります。息が切れてしまうし、途中で休憩している方も多く見かけます。でも上っていくにつれて、見下ろす渓谷の美しさとか、少しずつ道端に増えてくる梅の木に励まされてなんとか上りきりました。また梅の他にもたくさんの花が咲いていて、もう本当に春がやってきたことを実感しながら歩いていました。月ヶ瀬梅渓はその坂道の先の台地に、まるで花々の海原のように満開で広がっていました。
高台に上って見下ろす、絶景の梅林公園。
山の上では東西に長く梅林が点在していて、いくつかの見どころに分かれています。最も西側にあり、その広大な面積に無数の梅が咲き誇るのが「天神梅林」。近くに天神社、その傍らには梅の里ふれあい館という土産物屋があって賑わっています。
また天神梅林の東側にあるのが「梅林公園」。約40種、270本というさまざまな種類の梅を楽しめる広場で、高台に上って見下ろす梅畑はまさに絶景です。ここでシートを広げて弁当を食べるのが定番のひとつになっているようです。
渓谷の眺望と、梅の花が織りなす絶景。
また月ヶ瀬梅渓は急峻な斜面の上の台地に広がる梅林です。その台地の縁に沿って散策道があって、道沿いにはたくさんのお店や土産物屋が並んでいます。もちろんその道沿いにも梅の花は咲き乱れていて、谷を見下ろす雄大な眺望とのコラボもまた名物となっています。「一目八景」と呼ばれているのは、そんな眺望と梅の花が織りなす絶景が見られるスポット。展望台になっていて、遥か眼下に見下ろす五月川、川を挟んで景色の奥の方までずっと続いている大和高原、そしてそのパノラマの手前には満開の梅の花。思わずため息が漏れてしまうくらい、まさに月ヶ瀬梅渓を代表するハイライトシーンです。
月ヶ瀬梅渓の代表的スポット、帆浦梅林。
そして月ヶ瀬梅渓では外せない、代名詞的なエリアが「帆浦梅林」です。梅林そのものもさることながら、帆浦梅林のあたりには多くのお店が集まっているし、また谷を見下ろすテラス席などもあって大変な賑わいを見せているエリア。メディアの紹介などでもまず取り上げられるほど定番のスポットで、春の訪れを謳歌する人たちで大変な賑わいを見せます。観てよし、食べてよし、呑んでよし、まさに梅の花見を楽しめるスポットです。私も梅の花の下で、搾りたての梅ジュースを。甘酸っぱいその味はとても濃くて、風景とともに思い出に残る味です。
梅林を育てた、月ヶ瀬特産の烏梅。
月ヶ瀬梅渓にはまだまだ見どころがあります。鎌倉時代に月ヶ瀬で初めての梅が植樹されたと伝えられる「真福寺」、樹齢600年と推定される古木「桃仙の梅」、また梅の小さな木を鉢植えごと購入できる盆梅は月ヶ瀬の梅を自宅で鑑賞できる逸品です。
それと土産物店で売られている「烏梅(うばい)」も名物。この烏梅は梅の実を燻製した上にカチカチになるまで乾燥させたもので、まさにカラスのように真っ黒な色をしています。月ヶ瀬の烏梅は上質な染料として親しまれ、最盛期の江戸時代後期には約10万本の梅の木が育てられていたそうです。しかし時代が変化し烏梅は衰退、現在では唯一軒のみが生産するのみといいます。今は湯で煎じて飲むのが使い方の主流で、値段は少し高いですが月ヶ瀬ならではの特産品として人気です。
梅を大切に守り続ける、月ヶ瀬の伝統。
訪ねたのは3月上旬で、まさに満開がクライマックスを迎えた様子。春霞が暖かな1日を包み込んで、うららかな月ヶ瀬梅渓は人々の歓びに満ちています。奈良の山奥にある月ヶ瀬梅渓にはシーズンで約20万人が訪れ、年々観光客が増えてきているそうです。確かに関西屈指と言われるだけあり、また次の春も観梅に訪れたいと思わせる絶景の梅林です。
ところで眼下に見える五月川、実は昔はもっと谷底に水面があったそう。1969年に名張川を堰き止めて造られた高山ダムによるダム湖なのだと、後から知りました。湖底に沈んだ梅の木は約3800本もあったといいます。それでも可能な限り山の上へ移植されたそうで、月ヶ瀬がどれほど梅を大切にしてきた地域であることがよく分かります。それはこれからもずっと、守り続けられる村の伝統なのだと思います。
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アクセスマップ
詳細情報
名称 | 月ヶ瀬梅渓 |
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所在地 | 奈良県奈良市月ヶ瀬尾山 |
問い合わせ先 | 0743-92-0300 | 月ヶ瀬観光協会 |
休業日 | - |
料金 | - |
駐車場 | 有料駐車場 |
公式サイト | https://tsukigase-kanko.or.jp/umematsuri/ |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/月ヶ瀬梅林 |
食べログ | - |
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