旧帝国銀行広島支店

新しい未来へ動き出した、被爆建物。

広島を訪れる機会が増えるにつれ、被爆建物というものに興味が湧くようになりました。未曾有の悲劇の中も生き残り、現代に平和の尊さを伝える役割を担う、物言わぬ平和の代弁者たち。原爆ドームを筆頭に観光スポットとして知られるものから、街角に人知れずひっそりと佇むものまで。しかし皆共通して、突然降り注いだ理不尽な災禍を耐え、自らに刻まれた傷跡をもってして平和を訴えるのです。広島の繁華街にある旧帝国銀行広島支店も、そんな被爆建物のうちのひとつです。

復興の象徴として、本通りの発展を支えた。

賑わいを見せる本通商店街の一角にあります。ここは、爆心地から約360mの至近距離でした。辺り一面が壊滅的な焼け野原になってしまった時、ポツンと残っていたのが広島県物産陳列館と帝国銀行広島支店でした。前者はもちろん、のちの原爆ドームです。戦後、原爆ドームは被爆の象徴として保存展示されました。逆に帝国銀行広島支店は修復され引き続き使われることとなり、復興の象徴となりました。1950年に修復が完了し、帝国銀行が戻ってきました。その後いくつかの入れ替わりがあった後、1967年にこの建物を購入して開店したのが今もこの建物で営業するベーカリー、アンデルセンです。現在では全国的に展開して人気のベーカリーですが、はじまりの場所であり旗艦店であるのがこの建物なのです。

建て替えざるを得なかった、数奇な運命。

しかし実は、老朽化と耐震性の不足が原因で、2020年に建て替えられています。元々は2階建でしたが、ベーカリーの他にもテナントが展開する6階建の複合ビルとなりました。デザイン的な面では旧建物を引き継いだものが一部に再現されているものの、見た目は完全に最近の新しいビルなのです。でも実際には従前建物の外壁が一部に使われており、最大限の取り組みが行われたそうです。その結果、被爆建物としての認定も引き続きなされています。でもやはり、新しいビルにしか見えないのですが…。敷地の端には被爆直後の写真と建て替え後に移植された外壁がわかる写真がが掲示されていて、見比べることもできます。

アンデルセンもまた、広島復興を支えた。

正直な感想としては被爆建物として、建築的な面での興味を満たすことはなりませんでしたが、アンデルセンが果たしてきた広島復興、また従前建物を少しでも次代につなげたい思いは感じることが出来ました。
ちなみにアンデルセンは日本でパンを買う時の常識である、自分でトレーにピックアップしてレジで買うというスタイル発祥のお店です。もちろん評判のパンを購入することも、旧帝国銀行広島支店を訪問するひとつの目的です。

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