広島東照宮

400年、広島の街を見守る東照宮。

朝の広島東照宮は、二葉山の南斜面にある境内いっぱいに朝日を浴びて輝いて見えています。なだらかな傾斜地全体で、その日に必要な最大限の光を集めているような感じ、広島東照宮はこれ以上ないほどの明るさに包まれていました。光の粒が見えるほどに社殿や鎮守の森が輝き、そんな時に参詣したことに幸運さえ感じてしまいます。そんな明快で清々しい、10月の朝でした。

造営以来、ずっとこの見晴らしのいい場所で。

全国各地にある東照宮。有名なところでは栃木の日光東照宮、滋賀の日吉東照宮、また本宮である静岡の久能山東照宮などが挙げられます。そもそも東照宮とは、東照大権現たる徳川家康を祀る神社。3代将軍徳川家光による施策のため、どの東照宮も江戸時代初期からの古い歴史を持ちます。広島東照宮は当時の広島藩主浅野光晟によって、1648年に造営されました。広島城の鬼門の方角にあたるこの位置に造られ、以来ずっとこの見晴らしのいい場所に鎮座しています。

耐え残ったものが、今も歴史を紡いでいる。

麓の鳥居をくぐると、長い石段があります。一段ごとに高さがあって、なかなかしんどい石段です。しかしその分、登りきった境内から望む眺望は気持ちの良いものです。JR広島駅の北側は近年ずいぶんと再開発され、美しく整った駅前の風景が見晴らせます。また広島東照宮のすぐ東側では新しく高速道路の建設が進んでいて、ますます発展を続けてゆく広島の街の勢いを感じます。
社殿が並ぶ境内は、それほど広くはありません。入口でもある唐門とそれにつながる翼楼は渋めの朱塗りが印象的な建築、また入ってすぐの手水舎などは造営当初からの貴重な建物です。というのも広島に投下された原爆の被害は、やはり広島東照宮にもあったのです。爆心地から約2.1km、爆風と熱線によって他の多くの建物が倒壊や焼失する中、なんとか耐え残ったものが今も歴史を紡いでいるわけです。

朝日を浴びた拝殿は、ことのほか美しく。

朝早くの参拝者は、他にほとんどありません。1日という時空がこの場所から始まっているような、早朝の静寂とした神社が素晴らしいことを最近知りました。
正面に拝殿と本殿、また向かって右側には本地堂があります。朝日を浴びた拝殿がことのほか美しく、爽やかな朝を象徴する清々しい趣きに包まれています。拝殿と本殿は原爆により消失してしまい、現在の建物は創建350年を記念して1984年に再建されたもの。しかし400年近くこの地に鎮座し、広島の歴史を見てきた風格に満ちています。
そして境内は実はここだけではなくて、裏手にある参道を登れば、二葉山の山頂付近に奥宮があります。500段の石段があり標高は115mと、なかなか大変な場所。麓から見上げることも出来ます。この日は奥宮までは行けませんでしたが、眺望も素晴らしいといい、次の機会に伺いたいと思います。

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