鶴林寺
かくりんじ □兵庫県加古川市







完璧な美の世界、別名「播磨の法隆寺」。
整然とした境内に、国宝の建物2棟、国の重要文化財指定の建物4棟と多数の仏像や宝物を擁する、播磨きっての大寺院。また創建は589年と伝わる古刹で、聖徳太子の命によって開基されたことから「播磨の法隆寺」とも呼ばれます。そしてその名に決して劣らない、素晴らしき魅力に満ちた名刹でした。有名な寺が少ない播磨の地で、正直なところ訪ねる前まではそこまでの期待はしていなかったのですが、いい意味で完全に打ちのめされたというか、完璧な美の世界に言葉をなくすくらい魅了されたのです。

鶴林寺は聖徳太子の命による、創建589年と伝わる古刹。整然とした境内に多数の堂宇が建ち並び、「播磨の法隆寺」とも呼ばれる。
屋根が大きく広がり、迫力がある山門。
鶴林寺は加古川市の郊外に位置します。とはいえ周りは住宅街で、山並みも遠くにある平地。どうしてこの地が選ばれたのかは分かりませんが、何の変哲もない街中に突然森に囲まれた境内があります。南側に駐車場があり、すぐに山門があります。これは仁王門と呼ばれ、1672年に再建されたもの。屋根が空に対して大きく広がり、迫力がある山門です。十分に時間が染み込んだ古風な雰囲気があり、木造の二体の仁王像を納めています。仁王門をくぐったところに受付があり、入山料を納めて境内へと進みます。

1672年に再建された「仁王門」。屋根が空に対して大きく広がり、迫力がある山門。


左右に大きな金剛力士像が立つ。


信仰の厚さを物語る、仁王門に奉納された草鞋。
その絶大なる存在感を放つ、国宝の本堂。
ここまで来たら、もう鶴林寺の圧倒的な美しさに気付いているはずです。真っ直ぐ伸びる石畳、生い茂る木々が視界の左右にある中で、正面には本堂が厳然と構えています。その均整のとれたシルエット、絶妙な屋根の曲線、時を内包する黒褐色、そしてその絶大なる存在感に圧倒されました。本堂は国宝に指定されており、1397年に再建されたもの。多数の堂宇が建ち並ぶ鶴林寺の境内で最大の建物で、和様に大仏様と禅宗様を組み入れた折衷様建築の代表作とされます。堂内は光を取り込み明るく、外から見るより広く感じます。自ら般若心経を唱える門徒さんの読経が、心地よく反響しています。本尊は薬師如来、しかし60年に1度だけ開帳される秘仏となっています。

正面に厳然として構えるのは1397年の再建で国宝の本堂。均整のとれたシルエット、絶妙な屋根の曲線、絶大なる存在感を放つ。


「新西国三十三所」の第27番札所。


初夏には可憐な花を咲かせる菩提樹。
縋破風が特徴的な、美の結晶のような太子堂。
本堂だけで驚いてはいけません。鶴林寺にはもうひとつの国宝建築があります。それは本堂に向かって右手にある太子堂。規模的にはさほど大きくはありませんが、外観に宿った篤実な雰囲気に魅力があります。檜皮葺き屋根の正面側で、勾配が盛り上がる独特の形状をしているのが特徴。横から見ると変わった形をしていて、「縋破風(すがるはふ)」と呼ばれるそうです。建立は平安時代の1112年、兵庫県では最古の建築物です。内部には本尊である釈迦三尊像(重文)を安置し、さらに非公開ですが聖徳太子を描いた壁画(重文)、また肉眼では見えないものの九品来迎図、仏涅槃図の壁画も描かれています。

1112年建立で県内最古の建物「太子堂」も国宝。屋根の正面側で勾配が盛り上がる独特の形状「縋破風(すがるはふ)」が特徴的。


真っ青な夏空に「太子堂」のシルエットが映える。


薬師如来が安置される「新薬師堂」。
鶴林寺で唯一朱塗りの、三重塔。
鶴林寺の境内には雨後の筍のように、諸堂が密集して建てられています。国の重要文化財として護摩堂、常行堂、鐘楼が中心部に集まり、行者堂が境内の西端に建ちます。いずれも15〜16世紀に再建された日本史上かなり貴重なものであり、鶴林寺境内の質実とした雰囲気を作り出しています。ひとつひとつの建物の発する威厳が境内に満ち、時が止まったような平和を醸し出しています。その中で最も高く、三重塔が聳えています。室町時代再建のもので、鶴林寺で唯一朱塗りの建築物としてアクセントになっています。境内を囲む松林の外からも見え、この地域のどこからも仰ぎ見ることができるシンボルのような存在です。

室町時代再建とされる「三重塔」。境外からでも松林の上に見え、この地域のどこからも仰ぎ見ることができるシンボルのような存在。


境内には無数の石碑や石仏も並ぶ。


手前に鳥居があり、元は日吉神社だった「行者堂」。
境内には、他にも見ごたえある諸堂が並ぶ。
他にも見ごたえある諸堂が並びます。本堂本尊の薬師如来像が秘仏のため、常に会えるようにと薬師如来像と十二神埒像が安置された新薬師堂。江戸時代再建の観音堂。本堂裏手には子安地蔵堂。木々に包まれるように建つ法華一石一字塔や石造宝篋印塔といった古い石塔。また境内の東端には宝物館があり、泥棒が盗み出し壊そうとしたら「アイタタ」という声が聞こえたため改心したと伝えられている有名な「あいたた観音」を拝観できます。

境内に国宝の建物2棟、国の重要文化財指定の建物4棟と多数の仏像や宝物を擁する、まさに播磨きっての大寺院。


新薬師堂に安置する「薬師如来像」。


薬師如来像の脇を固める「月光菩薩像」に纏わる逸話も。
特別なものが、体に染み込んでくる。
数々の堂塔がゆっくり流れる時間の中に佇んでいます。整然として、泰然自若。その完璧なまでの美しさを、木陰のベンチに腰掛けて堪能します。まるで堂宇の大展示会のように、つかず離れずの距離に建ち並ぶ様子。それもまた、鶴林寺の魅力的な眺めです。境内は緑が豊かです。松林に囲まれ、外界と隔離された特別な世界。近隣の近代的な建築物が一切見えないので、今がいつの時代か分からない錯覚もあります。この森は鶴林寺の堂塔と同じように、昔からずっとそのままなのでしょうか。夏は終わりかけているようで、肌を撫でる少し涼しくなった風と、ツクツクボウシの鳴き声がそれを告げています。空に浮かぶ雲も、真夏ほど怒ってはいません。鶴林寺の優美で質実な雰囲気は居心地の良さと安心感を感じさせ、特別なものが体に染み込んでくるようなお寺でした。

境内は松林に囲まれ、外界と隔離された特別な場所。完璧な美の世界に言葉をなくすくらい魅了された。


1407年再建で国の重要文化財に指定された鐘楼。


1771年に建てられた「法華一石一字塔」。
photo.
アクセスマップ
詳細情報
名称 | 鶴林寺 |
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所在地 | 兵庫県加古川市加古川町北在家424 |
問い合わせ先 | 079-454-7053 | 鶴林寺 |
休業日 | - |
料金 | 入山料@500円(小中学生@200円) |
駐車場 | 無料駐車場 |
公式サイト | https://www.kakurinji.or.jp/ |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/鶴林寺_(加古川市) |
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