神子畑選鉱場跡
みこばたせんこうじょうあと □兵庫県朝来市





今は面影しかない、東洋一の選鉱場。
選鉱場とは聞き慣れない言葉です。鉱山から採掘した鉱石を砕いて、様々な方法で選別する施設です。金、銀、銅、錫など、鉱石それぞれの物理的な特性を利用して選別するそうです。神子畑選鉱場跡は、そのような選鉱場の中でも「東洋一」と言われるような規模で操業していた巨大選鉱場の跡地です。ここから北西へ約6kmにある明延鉱山で産出した鉱石を選鉱する施設でした。
実はこの場所もかつては銀や銅を産出する鉱山でした。しかし長年の採掘により鉱石は枯渇し、1913年に閉山。その後新しい役目を担うことになり、明延鉱山の選鉱場として大いに栄えました。昼夜問わず作業が続いたそうで、暗い山間に煌々と灯る明かりは不夜城と異名をとったそうです。最盛期には3,000名が働いていたそうで、生野銀山とともにこのあたりの一大産業として町民の暮らしを支えました。

「東洋一」と言われた規模で操業していた巨大選鉱場の跡地。鉱山から採掘した鉱石を砕いて、様々な方法で選別する施設。


山の斜面を利用して上から下へ工程が進んだ。


「シックナー」と呼ばれる巨大の円形の水槽跡。


最盛期は夜通し灯りが消えることなく「不夜城」と呼ばれた。


今は見事なまでの廃墟となっている。
インクラインの線路、そして異彩を放つシックナー。
でも明延鉱山が1987年に閉山すると同時に、神子畑選鉱場も閉鎖されました。青天の霹靂だったかもしれません。山の斜面を利用した選鉱場は、ひな壇のように複数の階層があり、幅110m、長さ165m、高低差75mの規模を誇る、要塞のような巨大建物。しかしその全てが、無用の長物になった瞬間でした。突然生気を失った巨人のように、神子畑選鉱場はその場で立ちすくむしかなかったのです。そして息吹を失ったまま17年後、2004年にほんの一部を残して取り壊されました。今出会えるのは、基礎のコンクリート、インクラインの線路、そして異彩を放つシックナー。まさに盛者必衰の理を表す廃墟として、深い山奥で眠りについています。

階段状のコンクリート基礎の横にインクラインが残っている。高低差75mを鉱石を積んで行き来した。


インクラインの最上部には鉄道の駅があったそう。


明延鉱山から鉱石を積んでくる明神電車も走っていた。
人と鉱石を載せて運んだ、通称一円電車。
シックナーはかなり印象的です。巨大な円形な「漏斗」のような外観です。選鉱の最終段階として、不要な物を選別する役目を担っていました。巨体を支えるコンクリートの柱、その傘の下には使われなくなった機械が集められて放置されています。廃墟の見本のような風格があり、見る者を釘付けにします。奥に見える階段状の建物跡はどっしりと地と一体になり、自らが山であるように微動だにせず構えています。インクラインの最上部には鉄道の駅があったそうです。明延鉱山から鉱石を積んでくる、明神電車。神子畑選鉱場を起点として、人も輸送しました。その運賃が1円だったので、通称一円電車と呼ばれた路線です。今でも敷地内に一円電車の車両が展示されています。

鉱山から人と鉱石を運んでいた明神電車の車両も展示されている。通称「一円電車」と呼ばれていた。


朽ちて行く時間を待つ構造物。


「シックナー」は選鉱の最終段階を担った施設。
選鉱場の記憶を紡ぐ、ムーセ旧居。
他にも鉱山開発に貢献したフランス人技師・ムーセ旧居が移設公開されていて、洋風の瀟洒な建物内では神子畑選鉱場の在りし日の写真や、実際に使われていた機械や道具も展示されています。明治5年の建物ということで、それだけでも一見の価値あり。そう、こうして神子畑選鉱場跡は、今も私たちに対して様々なことを提供してくれているのでした。その意味では現代になっても変わらず、世に価値を生み出す役割をこの生野の山奥て果たしているのです。

鉱山開発に貢献したフランス人技師・ムーセ旧居が移設公開されていて、実際に使われていた機械や道具も展示されている。


「シックナー」が建ち並ぶ光景。


「ムーセ旧居」にある全体模型。
photo.
アクセスマップ
詳細情報
名称 | 神子畑選鉱場跡 |
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所在地 | 兵庫県朝来市佐嚢1842番地1 |
問い合わせ先 | 079-666-8002 | 鉱石の道神子畑交流館「神選」 |
休業日 | 水曜、年末年始 |
料金 | - |
駐車場 | 無料駐車場 |
公式サイト | http://mikobata.com/ |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/神子畑選鉱場跡 |
食べログ | - |
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