三方五湖

湖と半島が折り重なりあう、風光明媚な情景。

三方五湖は若狭湾に面して五つの湖が寄り添うように集まった景勝地。もちろんアメリカの五大湖とは比べ物にならないくらい小さな小さな湖ばかりです。だけど例えば周囲の山に登ってみると、三方五湖全体が見渡せ、湖と半島が折り重なりあうその景観は素晴らしく、この規模だからこその風光明媚な情景を楽しませてくれます。古くは万葉集にも歌われていて、往古から愛でられてきた美しい湖群。そんな三方五湖を、太陽がヒリヒリと風景を焼くような真夏に訪ねました。

古くは万葉集にも歌われている三方五湖。写真は三方五湖レインボーラインにある「五湖テラス」からの眺望。

五湖と若狭湾が織り成す、水の景色。

五つの湖はそれぞれ三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖と呼ばれ、すべてがつながっています。数万年にも及ぶ地殻活動で地盤が沈み、そこに水が溜まってできたと言われます。周囲を低くなだらかな山々が囲み、五湖と若狭湾が織り成す水の景色との調和が印象的です。湖によって海水、汽水、淡水とそれぞれに塩分濃度が違い、多種多様な生物が住むことから、ラムサール条約にも登録されています。さらにその濃度の違いは、三方五湖に幻想的なイリュージョンをもたらします。
それは湖面の色。塩分濃度や水深の違いによって、それぞれの色が微妙に違って見えるのです。とはいっても目線で見ているだけでは分かりません。そんな三方五湖の風景を堪能するためには、車で「レインボーライン」を走って標高397mの梅丈岳山頂へ。随一のビュースポットで、五湖すべてを見下ろし、その色の違いを確かめることができます。

日本海側の風景もまた美しく、三方五湖が海と隣接していることがよく分かる。

風にさざ波を立てるだけの、静かな湖面。

絶景を堪能したあと、再び三方五湖の湖畔をドライブしている時、全てを奪い取るような強烈な真夏の日差しに耐えきれず、五湖のうちどれかも分からず(後になって地図で確かめると、それは淡水の三方湖でした)湖に飛び込みました。
山頂から見下ろした三方五湖も絶景でしたが、こうやって湖面から見る景色もまた美しいものです。風にさざ波を立てるだけの静かな湖面には、ぐるりを取り囲む山々の緑が溶け込んでいます。青々とした夏木立、揺るぎない夏空、息継ぎもせず鳴き続ける蝉時雨。夏の真ん中を突き刺す太陽光線も、湖に浮かんでいると幾分和らいだように感じます。そうやってしばらく体を冷ましていると、大自然のアクアリウムを泳ぐ小さな魚になった気分、世の中には日曜日しかないんじゃないかと思えるくらい平和な景色の中にしばらく浮かんでいました。

風にさざ波を立てるだけの静かな三方湖には、ぐるりを取り囲む山々の緑が溶け込んでいた。

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