福智院
ふくちいん □奈良県奈良市
寂然とした境内に宿るのは、成熟した時間。
観光のガイドブックに掲載されることも少ないし、境内は狭いし、特段目を引くような華やかさもありません。でもその「普通な感じ」が、福智院の魅力です。逆にちょっと雑然としていたり、飾らない空気が流れる雰囲気が、成熟した時間を感じさせてくれる境内です。
福智院の歴史は、奈良時代までさかのぼります。736年に聖武天皇の発願によって創建され、鎌倉時代に現在の地に移ってきました。その時に造られたのが今の本堂と、その中に鎮座する木造の地蔵菩薩像。ともに重要文化財で、はるかなる時を経た風情をありのままに纏っています。特に7m近くもあり「地蔵大仏」とも呼ばれる地蔵菩薩像は必見です。
本堂は鎌倉時代に再建されたもので、本尊の地蔵菩薩像とともに国の重要文化財に指定されている。
本尊は大きさから「地蔵大仏」と呼ばれる。
大仏様の様式が取り入れられた本堂。
セミ捕り小僧にとっては、宝箱のような境内。
福智院に一番よく通ったのは、セミ捕りに夢中になっていた小学生のころ。網と虫かごと水筒を持って自宅から出発してすぐ、福智院は一番よくセミが捕れるお決まりのコースに入っていたからです。福智院の土塀の中で反響するセミの大合唱が、境内を越えて通りまで響いてきます。どれほどの数の獲物がいるのか、セミ捕り小僧にとっては宝箱のようなその境内。小さな門をくぐるその瞬間と、入ってすぐにあるクマゼミが大量に留まる木をチェックする瞬間は、膨らんだ期待が一気に叶えられるような、わくわくする興奮を覚えたものです。
瓦には「福智院」の文字が見える。創建は736年と伝えられる古刹で、かつては清水寺と称した。
門をくぐる瞬間には、今もあの気持ちが蘇る。
今でも福智院の前を歩くことが年に数回あります。あのセミ捕りの夏はもう30数年も前のことですが、お寺の雰囲気や堂宇の佇まいはあの時と何も変わっていません。それがうれしくて、今も時々この寺を訪れるのです。懐かしい音楽を聴くとそれを聴いていた当時を思い出すように、門をくぐる瞬間には今もセミ捕り小僧のあの気持ちが蘇ってきます。それはとても温かい、素敵な体験。思い出が刻み込まれたアルバムのように、いつまでもそのままの景色でいてほしいと願っています。
福智院の小さな山門。奥には本堂が見えている。
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アクセスマップ
詳細情報
名称 | 福智院 |
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所在地 | 奈良県奈良市福智院町46 |
問い合わせ先 | 0742-22-1358 | 福智院 |
休業日 | 不定休 |
料金 | 拝観料:大人400円、小学生200円 |
駐車場 | 無料駐車場 |
公式サイト | - |
wikipedia | http://ja.wikipedia.org/wiki/福智院 |
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