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犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

犬島アートプロジェクト「精錬所」

いぬじまあーとぷろじぇくと「せいれんじょ」 □岡山県岡山市
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オススメ度

異様なまでの存在感を放つ、犬島のシンボル。

犬島へ渡る前に、対岸からでも感じるその存在感。少しだけ霞む海の向こう、大きな煙突が数本、島に突き立っているのが見えます。美しいもののようであり、しかし何か異様なものにも見える不思議な光景です。なぜか何本あるのかを数える気にならないのは、すでにそれは簡潔されたひとつのシーンだから、あるいは見た瞬間にその景色が何たるかを理解できるからなのか。とにかく一度見ると思考回路は働かなくなり、それ以上のことは何もできないような、つまり一目でその世界に引き込まれてしまうような光景でした。

犬島アートプロジェクト「精錬所」

直島に次ぐアートの島として知られるようになった犬島。その魅力の最たるものが「精錬所」である。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

「精錬所」では地面にも煉瓦が敷かれている。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

廃墟だったものが、今ではそうではない。

在るものを活かし、無いものを創る。

犬島に着くころには、いよいよその煙突群も色を表し、それらが煉瓦積みにされた古い建造物であることが分かります。あろうことかその中には激しく崩壊しているもの、崩壊途中と表現した方がいいのか、半面だけが崩れ去ってもう半面はかろうじて残っているような状態です。高々と積み上がりクライマックスを迎えたジェンガのように、究極のアンバランスの中に立つその煙突は、見ていてハラハラするくらい危なげに立っています。
精錬所は犬島アートプロジェクトの目玉として、「在るものを活かし、無いものを創る」というコンセプトのもとに2008年にオープンした美術館。加えてこの島の重要な産業だった、銅の精錬工場の廃墟を保存した近代産業遺産でもあります。明治41年に操業を開始したといいますから、100年ほどの歴史をもつ建物群ですが、まるでメソポタミアの遺跡のような考古学的オーラを放っています。

犬島アートプロジェクト「精錬所」

遺構とともに残された無数の煉瓦造りの煙突。原形のままのものから朽ち果てつつあるものまで見ることができる。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

いつも近くに感じる海の気配。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

今もドラマチックな存在感を放つ煙突。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

逆に朽ちかけた煙突も多い。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

対岸の沖鼓島まで、美しい入江が続く。

鉱滓から作られる黒煉瓦、時間が止まった世界。

ゲートをくぐればすぐに時間の止まったエリアが始まります。まず目にするのは、カラミ煉瓦で造られた建物の壁。銅の精錬過程で発生する鉱滓から作られる、鈍い光沢を持った黒い煉瓦です。幾重にも並ぶ黒煉瓦の壁は、訪れた者をさっそく異空間へと迷い込ませます。
右手には展示ゾーンへの入口があります。入口は2箇所あり、季節によって使い分けられます。その理由をスタッフから聞いて驚きました。実はこの建物には一切の空調装置がない。空気を吸い上げるという煙突効果を利用して、建物のすべての空間を煙突に直結させ、空気に流れを作ることで外気を取り込んで室温を調節する。夏は長く暗い通路を通すことで冷ました空気を、冬は暖めた空気を短い経路で循環させる、という限りなくエコな仕組み。空調に電気は一切使われていないのです。訪れたのは真夏でしたが、実際に空気の取り込み口からはとめどなく風が入り込み、通路はひんやりとしていましたし、メインの展示室も涼しくゆっくりと作品を鑑賞できました。

犬島アートプロジェクト「精錬所」

銅の精錬過程で発生する鉱滓から作られる、黒く鈍い光沢を持った「カラミ煉瓦」。随所で使われている。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

煙突に生えた若木がかわいらしい。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

澄んだ空に煙突のシルエットが浮かぶ。

廃れたものの美しさや存在感を、肌で感じる。

この美術館に展開されているのは、柳幸典氏の作品。三島由紀夫を題材に空間全体を使って制作されていて、特に展示室に展示されている三島由紀夫が実際に過ごした部屋そのものを、円筒状の天井から吊るしてある作品は見応えがあります。
また冷気を取り込む方の入口から長く続く通路、つまり夏用の入口からの通路、これが衝撃的なくらいトリッキーで不思議な体験的作品で楽しめます。
スタッフの案内で順次見終わると、あの煙突群や発電所跡などが散在する近代産業遺産エリアへと自由に散策します。廃墟を飲み込まんとばかりに繁る緑、古びた煉瓦は蔓植物には掴まえやすいのか、びっしりと建物を覆おうとしています。小径を歩きながら、思わず出会う新鮮な古い景色を楽しみます。廃れたものの美しさや存在感が肌で感じられ、そういった感覚が好きな人にはたまらない風景だと思います。犬島では特に必見の名所でした。アートに興味がない人でも、この精錬所は十分に見応えがあると思います。
結局、あの今にも倒れそうな煙突は、果たして補強工事をされているのかどうか分からずじまいでした。もちろん調べれば分かるんでしょうけど、あの初めて見た時の衝撃とある種の恐怖感はいつまでも忘れたくないので、知らないままでいようと思います。

犬島アートプロジェクト「精錬所」

精錬所の敷地内には「犬島精錬所美術館」も整備され、島には文化的な気風も流れている。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

煙突にも徐々に自然が侵出している。

犬島アートプロジェクト「精錬所」 犬島アートプロジェクト「精錬所」

島のどこにいても、その煙突群の気配を感じる。

photo.

アクセスマップ

詳細情報

名称 犬島アートプロジェクト「精錬所」
所在地 岡山県岡山市東区犬島327-5
問い合わせ先 086-947-1112 | 犬島アートプロジェクト
休業日 月・火曜日
料金 大人1000円、15歳以下無料
駐車場 なし
公式サイト https://benesse-artsite.jp/art/seirensho.html
wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/犬島アートプロジェクト
食べログ -
トリップアドバイザー https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298134-d1849634-Reviews-Seirensho-Okayama_Okayama_Prefecture_Chugoku.html
LAST VISIT 201107                         

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