鹿の角切り
しかのつのきり □奈良県奈良市
鹿との共生を願う、奈良の秋の風物詩。
奈良の秋が深まったことを知らせるように、毎年10月になると鹿の角切りが行われます。1671年から続くとされる伝統行事で、当時は鹿の管理者であった興福寺によって始められたと伝わります。
雄鹿の角は毎年生え替わります。年が明けた頃に抜け落ちた角は、春には丸みを帯びて柔らかい表皮に包まれた状態でまた生えてきます。やがて夏を越えたあたりから表皮が剥がれ、硬く骨化した鋭い角になるのが秋。そもそも雄の象徴であり、戦う時の武器である角。木の幹などに擦り付けたりして、雄鹿は自分の角を立派に仕上げることに余念がありません。
江戸時代から約350年以上続いている奈良の伝統行事。鹿を追い込み角を切る「勢子」がまず入場し、行事が始まる。
飛火野の奥にある会場への入場口。
細長い会場。三方に観覧席がある。
細心の注意も、鹿の角切りはまさに戦場。
ただ彼らが住むのは奈良という人間の町。住民に危害を加えないように、それと彼ら同士突き合って怪我することのないように、ちょっと可哀想な気もしますが、立派な角は切られてしまいます。舞台は春日大社の表参道沿いの森の中にある鹿苑という施設。角切りが行われる芝生の広場を取り囲むように席があり、ここから観客達は勇猛な儀式を観戦します。
鹿の角切りはまさに戦場。鹿達だって言葉の通じない相手に説明もなく自慢の角を切られたくないです。人間だって鋭い角を相手に怪我を覚悟の大仕事。だから思わぬ出来事も起こり得るわけで、そのために鹿の愛護協会の方達によって鹿達に危険が及ばないように、細心の注意を払って行われます。
柱とロープで鹿が動けない状態まで慎重に鹿を追い込んでゆく。
雄鹿の角は秋になると鋭さを増している。
鹿の追い込みには、真っ赤な旗が使われる。
また次の年には、今年よりももっと立派な角を生やす。
とはいっても角切りは、暴れる鹿を捕まえてノコギリで切り落とすという勇壮な儀式です。人間と鹿が観客席に囲まれた舞台で繰り広げる格闘にも似たやり取りは、さながらプチ闘牛のように緊迫感と迫力があります。鹿の角が切られると、場内からは拍手が起こり、「勢子」と呼ばれる切り手はそれに応えます。自慢の角を切り落とされた鹿はちょっと悔しそうな表情で場内を出ていきますが、また次の年には、今年よりももっと立派な角を生やします。
古くは町中そこらじゅうで行われていて、人々は家の中からその様子を眺めていたそうです。このことから奈良町の民家の格子は「鹿格子」と呼ばれます。奈良では昔から、人と鹿は切っても切れない背中合わせの関係。お互いがいい距離で共生していくために生まれた鹿の角切りという行事。奈良で育った僕にとって、そんなことを再認識させてくれる行事でもありました。
鹿を押さえ込んでから、ノコギリで慎重に角を落とす。「神官」が鹿を落ち着かせるように水差しで水を与える。
追い込みの際に鹿が逃げるスピードは相当なもの。
切られた角だが、また次の春には生えてくる。
photo.
アクセスマップ
詳細情報
名称 | 鹿の角切り |
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所在地 | 奈良県奈良市春日野町160 |
問い合わせ先 | 0742-22-2388 | 奈良の鹿愛護会 |
休業日 | - |
料金 | - |
駐車場 | 周辺有料駐車場あり |
公式サイト | https://naradeer.com/event/tsunokiri.html |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/奈良の鹿 |
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