梟の館

尾道の路地裏に見つけた、夢の世界と満月の物語。

情緒溢れる尾道の坂道の風景。数々の映画の舞台となり、そして訪れた人をも映画のワンシーンの中にいるかのような気分にさせてくれる不思議な町。旅人を虜にしてしまうノスタルジックな雰囲気がたまらない町です。
細い路地にざわめいた懐かしい空気は、さっき降った通り雨でしっとりと落ち着き、雨と土と緑が混じり合った匂いを漂わせます。雨宿りしていた猫達が足音も立てずに、通りに繰り出してきました。

築80年という古民家を改装したカフェ。尾道の坂道に流れる特別な雰囲気が、そのまま店内にも満ちている。

蔓に覆われ、周囲の木々と同化する独特の佇まい。

そんな町の、海が見える高いところにあるのが梟の館というカフェ。鬱蒼とした森に包まれるように佇む、築80年という古民家を改装してできたお店です。蔓に覆われ、周囲に高く茂る木々と同化したような独特の佇まい。夢の世界とか、幻想の迷路とか、そんな浮き世離れした感情にさせられるその不思議な風貌の外観は、どこか異色な存在感を放っています。
店先では木彫りの梟が迎えてくれます。店内はレトロな調度品で統一されていて、小粋なジャズが流れています。木枠の窓からはさっき登ってきた坂道の町が見え、窓側はカウンター席になっています。腰を下ろすと、すぐにまろやかなリラックスムード。温かな何かに全身を包まれたような、安心感に満たされる空間なんです。一杯一杯、注文を受けてから豆を挽くというこだわりのコーヒーを飲みながら、何を見るのでもなく窓の外を眺めていました。

夏になると蔦も成長し、緑に包まれた外観も見ごたえがある。

この日は窓際で、抹茶を嗜む。

窓側の席から、春の訪れを感じながら。

梟たちはみな、満月の夜を待っている。

店内にはたくさんの梟の置物がいて、彼らはみな満月の夜を待っています。梟の館では、月に一度の満月の夜だけ、「観月会」というワインバーが開かれます。店からほど近くの楠には、本当に梟が住んでいて、静かな夜にはその鳴き声が響くのだそう。どこまでも不思議でロマンティックな、まるで店全体が生きているひとりの芸術家のような、まさに奇跡のカフェでした。

店内にはたくさんの梟の置物がいて、彼らはみな満月の夜を待っている。

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