唐人墓

豪華な外観に秘められた、悲しみの歴史。

唐人墓は石垣島の南西部、観音崎と呼ばれる小さな岬の近くに建っています。中華風で極彩色に飾られた、鮮やかで豪華な外観。屋根には鳳凰や龍、仙人たちの彫像も装飾として施され、一見すると中国の城のような絢爛さがある建築物です。写真を撮った日はあいにくの天気でしたが、前日に見た時は明るい太陽を浴びていよいよその美しい色彩を放ち、青空とのコントラストが際立っていました。唐人墓の手前にはシーサーが狛犬のように控え、また周囲にも六角形の東屋や記念碑があり、観光客が訪れる広場のようになっています。

その史実は、過酷すぎるものだった。

しかし唐人墓は、その華麗な外観からは想像もつかないほどの悲しい歴史を背負っています。墓と呼ばれるからには墓なのですが、その史実は過酷すぎるものでした。
幕末の1852年、苦力（クーリー）と呼ばれた中国人奴隷を積んでアメリカに向かっていた船で反乱が起き、船長を殺害した苦力たちは石垣島に上陸します。島の人々はその苦力たちを保護していましたが、やがて白人たちが石垣島にやってきて何百人もの苦力を報復として殺害したのだそうです。それはまさに虐殺といえる、残酷な報復だったといいます。それ以外にも病気や自殺などで多くの苦力が亡くなりました。

人権の尊重や世界の平和を、祈る場所として。

ロバート・バウン号事件と呼ばれる一連の悲劇の中、一部は幸運にも中国に戻れたそうですが、しかし多くの苦力が石垣島で命を落としました。石垣島には苦力たちの墓が散在し、またこの場所には三百唐人墓とよばれる古い石積みの墓がありましたが、1971年にすべてを合祀するかたちでこの唐人墓が建てられたのです。それ以来、歴史の悲劇に果てた人々を慰霊するとともに、人権の尊重や世界の平和を祈る場所として、唐人墓はこの地に佇んでいます。観光客は私の他に誰もおらずひっそりとしていましたが、唐人墓が伝えている悲劇が二度と起こらないためにも、もっと多くの人に訪ねてもらいたいと願います。

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