広島平和記念資料館
ひろしまへいわきねんしりょうかん □広島県広島市





胸に迫り来る、本当のヒロシマ。
小学校の修学旅行以来、30数年ぶりに広島平和記念資料館を訪れました。昔は原爆資料館と言ってた記憶があります。結論から言えば、昔見た時よりももっと切実に、生々しく当時の様子が伝わってくる展示に変わったと感じました。もちろん私自身が歳を重ねたこともあるでしょうし、原爆や戦争に関する興味度合いも増していることもあります。でも確実に展示方針が変わったと感じましたし、私としては良い方向に進化していると感じました。平日の8時半、開館間もない時間に訪ねた時の記録です。

子供の頃に見た展示とはガラリと様相が変わって、もっと切実に生々しく当時の様子が伝わってくる展示となった。


「広島平和記念資料館」のメイン入口。


焼け野原になった広島市街のパノラマ展示。
重要文化財に指定された、資料館の建物。
広島平和記念資料館は1955年の開業。著名な建築家・丹下健三氏の設計により建設された建物で、戦後の建築物としては国内で初めて重要文化財に指定された名建築です。その建築美もさることながら、やはり原爆の悲惨な真実を今に伝える役割は重く、人類にとって大切なものを残すという大変重要な使命を果たしている施設です。3棟並ぶ建物のうち、真ん中の本館と東館が資料館となっています。入口は東館、順路に添うとまず本館の展示を見て、東館に戻ってくるようになっています。

著名な建築家・丹下健三氏の設計により1955年に開業。戦後の建築物としては初めて重要文化財に指定された。
写真と実物を中心とした、リアリティのある展示。
東館から本館への渡り廊下の正面に、怪我をしたひとりの少女の写真が掲げられています。資料館で最初に見る展示物、何かを暗示しているかのような少女の眼差しに、急に別の世界に引き込まれるような感覚が生まれます。次の空間では足元に広がる広島の街のジオラマに、原爆投下の様子や被害の広がり方がプロジェクションマッピングで克明に表現されます。そして次の部屋からは照明が一段と暗くなり、写真と実物を中心としたリアリティのある展示が続きます。目を背けたくなるような写真が並び、また被災者が実際に着ていたボロボロの衣服や所持品が展示されています。黒焦げの弁当箱や熱線により焼き付けられた人影が写る石壁など、小学生の時に見た記憶があるものもありました。

写真と実物を中心としたリアリティのある展示。80年を経た今でも痛みを伴いながら、多くのことを語りかけてくる。


原爆投下の様子をプロジェクションマッピングで再現。


ぼろぼろになった衣服が被爆者の写真とともに展示されている。
再現人形よりも、より深く感じたもの。
しかし展示物としてかなり印象に残っていた、被災者を模した再現人形はすべて無くなっていました。これは2018年の改修時に撤去されたからです。さまざまな議論が交わされたのち、現在のような展示方針に切り替えられたそうです。確かにネットで当時の再現人形を見てみると今更ながらややリアリティに欠けるというか、これは比較論ですが現在の展示の方がより臨場感というか、迫り来る悲劇というのを感じることができます。その時広島で起こった未曾有の被害は、写真や言葉の方が心を打つものがありました。その点で、現在の展示方針にはすごく共感しました。そして原爆の惨状と被災者の方々の途轍もない苦しみを、直に理解できたような気がします。そう、再現人形よりも、実際の広島はもっともっと悲惨な状況だったのです。それが露わになる展示だと思います。

象徴的な展示である「三人の中学生の遺品」。中学生が駆り出された建物疎開作業中に被爆し、多くの犠牲者を出した。
被爆の苦しみは、ずっと続いている。
本館の展示を見終わると、ガラスのカーテンウォールから北側に広場と原爆死没者慰霊碑を望みながら東館へ向かいます。丹下健三氏が平和記念公園を設計する際に骨子とした、資料館、慰霊碑、原爆ドームが一直線に並ぶ配置がよく分かります。そしてこの長い廊下の最後に、一枚のパネルが設置されています。そこには和やかな笑顔を見せるひとりの成人女性が写っています。それは本館の入口で見た、あの怪我をした少女のその後の姿でした。ああ、回復して結婚もしたのだと、良かったと思いました。でもそれは違うのです。彼女はその後若くして後遺症により命を落とすのです。被爆の苦しみは、ずっと続いているのです。今も。

歴史の教科書でも有名な「人影の石」には、強烈な熱線が建物を焼いた時にそこにいた人のところだけ焼けずに残った影がある。
設計コンセプトは、「平和を創る工場」。
東館に戻ると、そこでは原爆の仕組みや歴史、戦争の経緯や戦後のことなど、本館とは違って具体的な事物の展示が中心です。一階では定期的に企画展などが行われています。この時は被災後の医療従事者をテーマにした展示が催されていて、非常に興味深い内容でした。
広島平和記念資料館は、「平和を創る工場」というコンセプトのもと設計されたそうです。その意思は十分に発揮されていると感じました。また建築物としての価値も、十分に理解できる建物でもありました。本館の一階部分は柱のみで、室内としての空間はありません。ふき晒しのピロティになっているのですが、これによって街を歩く人の目線からでも、原爆ドームまで見通せるのです。さまざまな配慮と意匠を持ちながらも、本旨である世界平和への願いをあらたにさせる、素晴らしい資料館でした。

平和記念資料館から「原爆死没者慰霊碑」「平和の灯」「原爆ドーム」が一直線に並ぶようデザインされている。


企画展も随時開催されている。


平和記念資料館の南側正面。
photo.
アクセスマップ
詳細情報
名称 | 広島平和記念資料館 |
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所在地 | 広島県広島市中区中島町1-2 |
問い合わせ先 | 082-241-4004 | 広島平和記念資料館 |
休業日 | 12月29日~1月1日 |
料金 | 大人(大学生以上)200円、高校生100円、中学生以下無料 |
駐車場 | - |
公式サイト | https://hpmmuseum.jp/ |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/広島平和記念資料館 |
食べログ | - |
トリップアドバイザー | https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298561-d320360-Reviews-Hiroshima_Peace_Memorial_Museum-Hiroshima_Hiroshima_Prefecture_Chugoku.html |
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