黒耀の水

黒耀石が研ぎ澄ました、限りなく透明な湧水。

美ヶ原からビーナスラインを逸れ、東方面への県道178号線。道は一気に標高を下げてから、沢沿いを走る道。白樺の森を抜ける、新緑のトンネルをしばらく走ると、中山道の宿場町・和田宿にたどり着きます。
古くは中山道の難所として知られた和田峠ですが、はるか歴史をさかのぼれば、石器時代。ここは矢じりやナイフの材料に適した黒耀石が採れる場所として先史時代から知られていました。特に良質な黒耀石が採れることで有名で、全国有数の産地として名を馳せていたのです。
そんな黒耀石の岩盤をじっくりと長い年月をかけて通り抜け、湧き出す名水があります。それが黒耀の水。中山道から少し逸れた場所に、こんこんと湧き出しています。

「黒耀の水」は矢じりやナイフの材料に適した黒耀石が採石された地に湧く名水。

ひそかに賑わいを見せる。穴場スポット。

一見ただの駐車場のようなアスファルトの広場。その中心に取水場があります。到着すると何台かの車が取水場を取り巻いて停まっています。たくさんのポリタンクにたっぷり注いでいる地元の方や、ペットボトルに注ぐ他府県ナンバーの観光客まで。口コミでの評価なども高く、ひそかに賑わいを見せる穴場スポットです。
黒く鋭い輝きを放つ黒耀石、秘密めいたその地下鉱脈に洗われた水は、不純物の一切を取り払われたかのように限りなく透明です。超がつくほどの軟水として知られていて、飲んでみると驚くほどなめらか。高原の涼しい大地の温度を伝えるかのように、その冷たさも特徴です。
広場のすぐ横には、名水を使って作る豆腐屋があります。美しい水で水車を回すなんて、なんだか贅沢。また黒耀の水を使えば、お茶やコーヒーがまろやかになるのだそう。さっそくもう一本ペットボトルを用意して、自宅まで持ち帰ることにしました。

駐車スペースも広く、採水のために多くの人が訪れている。

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