古座川・カヌー川下り

川面から楽しむ清流にまつわる、小さな物語たち。

和歌山の最南端、串本町と古座川町を流れる清流・古座川。世界遺産の紀伊山地を母なる大地として生まれた水を運ぶ、穏やかで美しい川です。流域には巨岩や奇岩が多く、一枚岩、天柱岩、牡丹岩、虫喰岩など、この辺りに太古から様々な地理的大変革があったことを知らせてくれます。源流付近は日本有数の降雨量を誇り、水量が豊富。加えて上流を主として自然が本来の姿を残していて、川を流れる水の透明度が素晴らしいのです。鮎の漁獲量がとても多かったり、天然のウナギも多く生息していたり、上流にはオオサンショウウオが繁殖していたり、とにかく清流たる条件を見事に揃えている川です。

和歌山の最南端を流れる清流・古座川と一体となって漕いで進む、素晴らしいカヌーの旅が始まる。

清く美しい古座川を感じる、アクティビティ。

そんな清く美しい古座川で楽しめるアクティビティが、カヌーでの川下りです。古座川は流れが本当に穏やかで、初心者でも簡単なレクチャのみで十分楽しめるとあって、家族連れにも大人気を博しています。河口付近にあるJR古座川駅の脇に観光協会があり、そこで申込をします。駅舎の隣の建物がレンタルカヌーの拠点になっていて、ライフジャケットやヘルメットまで全て借りることができます。
古座川の川下りコースの説明を受けると、そこからはタクシーでスタート地点へ。距離別に数ヵ所のスタート地点が設けられていて、予定や体力に合わせてチョイスできるようになっています。レンタルしたカヌーをタクシーの屋根に乗せて、各々のスタート地点まで運ばれます。

JR古座川駅前でカヌーをレンタルしてタクシーでスタート点へ。

暑さは嘘のように和らぎ、川面は潤った涼しさがある。

訪れたのは盛夏、ジリジリ焼き付けるような日差しで太陽が攻めてくる灼熱の一日。負けじと大音量で鳴き続けるセミの合唱や、両岸に聳える山々はいよいよ緑色に燃え、夏が夏らしくあるべき条件があるなら、その全てを満たすような一日でした。
ところがいざ古座川にカヌーで浮かんでみると、岸にいた時のうだるような暑さは嘘のように和らぎ、川面は潤った涼しさがあり爽やかな風さえ吹いています。まるで川の上にもうひとつの流れがあるみたいに、古座川の雄大な蛇行に合わせて風が吹いているようです。

古座川の流れはとても穏やかで、初心者でも何の心配もなくカヌーが楽しめる。

タクシーの屋根の上でカヌーを運ぶ。

夏らしい風景がスタート地点。

漕ぎ疲れたら、のんびりと川の流れに。

スタート地点から河口のゴール地点まで約10kmのコースを楽しみましたが、流れはとても穏やか。もちろん瀬になるとある程度の速さがありますし、雨の降った後などはもっとスピードが出るのかもしれませんが、全体的には瀞が多くてとても緩やかに水は流れます。とはいえオールで漕がなくてもカヌーは自然と流されてゆくので、漕ぎ疲れたらのんびりと川の流れに任せて下ります。

古座川の水の透明感。青い川底を見ながら、川の流れに乗る。

本当に美しい、川面からの風景。

古座川の両岸には豊かな緑が生い茂る。

奥行きと、ボリューム感のある緑が印象的。

川の水は前評判通り、透明感があって素晴らしいものです。時おり小さな魚たちが川床を滑るように泳ぐのが見えます。川面は瀬ではキラキラと光の粒子を跳ね返し、逆に瀞では乳白の緑色をした水面に光を吸い込んでゆきます。目線を上げると、川辺の森とその向こうの山が立体的に重なり、奥行きとボリューム感のある緑が印象的。川の流れに乗って見ていると、それらがフィルムロールのように横へ横へとスクロールし、止まることなく続きます。風情ある沈下橋、頭上には真夏の青空を旋回する鳶、上手に上昇気流を捕らえては風と戯れています。
そういった清流にまつわる小さな物語を楽しみながら、古座川のカヌー川下りは続きました。河口のゴールまで3時間。歩くより遅いスピードになりましたが、ゆっくりゆっくり進んだからこそ発見できた、たくさんの素敵な景色。そしてますますカヌーの魅力にとりつかれました。

コースは複数あり、体力やレベルに合ったカヌーが楽しめる。今回は約10kmを3時間かけてのんびりと。

浅いところでも流れが緩やかなのが特徴。

まるで自分自身が川の水になったかのような時間。

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