別所温泉・大湯

風情ある温泉町、別名・葵の湯と呼ばれる名物湯。

信州の鎌倉とも呼ばれる塩田平、夫神岳という静かな山の斜面地に、信州最古という歴史ある温泉地・別所温泉があります。温泉街の中心には、厄除観音として有名な北向観音があり、それを取り巻くようにして20軒ほどの温泉旅館が立ち並びます。風情あふれる町並みは数々の映画やドラマのロケ地ともなり、訪れる人にとっても日常を忘れさせてくれる雰囲気が素敵な温泉街です。
別所温泉には日が落ちたあとに訪れたため、町はすでにひっそりとしていました。所々で温泉宿から宿泊客の声が聞こえてはきましたが、平日ということもあってか通りは寂しいくらいに静寂で、街灯だけがぽつぽつと所在なげに光を落としています。

信州最古という歴史ある温泉地・別所温泉。訪れる人にとっても日常を忘れさせてくれる雰囲気が素敵な温泉街。

湯はごく薄い黄緑色で、ほのかな硫黄の香り。

そんな中で見付けた、柔らかで暖かみのある光。それは大湯という共同浴場です。別所温泉には他にも大師湯・石湯という共同浴場がありますが、この大湯が一番人気。史実から、別名葵の湯とも呼ばれています。
建物は立派な唐破風三層の瓦屋根がトレードマークで、どっしりと風格のある佇まい。内部はいかにも昔ながらの共同浴場といった感じ、地元の方も結構いらっしゃるようで、生活感が感じられ親しみのある雰囲気が印象的です。湯はごく薄く黄緑色でやや硫黄の香りがする、さらりとした気持ちのよい肌触りです。共同浴場には珍しく、露天風呂まであります。
心地良く体が温まり、あがった後は入口脇の小さなベンチで小休憩を取りました。軒先の誘蛾灯に集まる小虫を目で追いながら、徐々に引いてゆく汗と、入れ替わって増してくる涼しさを楽しみました。辺りは相変わらず静かで、時々誘蛾灯がパチッと立てる音だけが続いていました。

温泉街には風情ある情景が随所にある。写真は3回お湯を掛けると願いが叶うという「湯かけ地蔵」。

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