南瓜

古い桟橋に異彩を放つ、直島の新しいシンボル。

今や直島のシンボルマークとして、どのガイドブックにも登場する「南瓜」。ベネッセアートサイトの中にあり、こぢんまりとした砂浜から延びる小さな古い桟橋の先っぽに、その空間に異彩を放つ存在感で佇んでいます。
この黄色い南瓜は現代彫刻家の草間彌生氏の作品で、1994年に制作されたといいますから、もう30年以上もあの桟橋で海と対峙しています。今や「かぼちゃ詣で」という言葉もあるそうで、直島を代表するオブジェ。鮮やかな黄色に墨のような黒い水玉がとても印象に残ります。
春のとある日。昼間に南瓜を訪れた時、そこでは結婚式が行われていました。青い海、黄色い南瓜の前で愛を誓うふたりと、ほんの少しだけの参列者。もちろん通りすがりで全然知らない人たちの結婚式ですが、なんだかとても素敵な光景でした。

アートの島・直島のシンボルといっても過言ではない、草間彌生氏の「南瓜」。砂浜に突き出た突堤の先端に佇む。

黒の斑点が黄色を侵食し、夜に同化してゆく。

改めて夕刻、誰もいなくなった南瓜を訪ねます。だんだんと群青色の濃さを増してゆく空と海。それとはくっきりとしたコントラストで、南瓜はまだ黄色を維持していました。それよりか逆に、あたかもスポットライトのように、夕闇の薄明かりは全てこの南瓜に集められたみたいに、さっきまでよりずっと明るい黄色になったような気さえします。
でもそれもやがて、黒の斑点が黄色を侵食し、徐々に広がるようにして南瓜自身を夜闇に同化させてゆきました。一日の終わりに、ロウソクの火が消える直前に一瞬ぽっと人知れず明るくなったのを見たような気がして、この景色を独り占めできたかどうか、もう一度あたりをきょろきょろと見回してしまいました。

今や「かぼちゃ詣で」という言葉もあるそう。鮮やかな黄色に黒い水玉がとても印象的。

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