角屋

島の人々それぞれの時間を、刻み続ける空間。

アートの島、直島の代表的な観光スポットである家プロジェクト。角屋はその創設期に公開された作品のひとつです。本村地区にある古い民家を改装した建物に、数字をテーマにした展示が行われています。
いつしか島に残された木造の小さな家は、黒褐色の焼杉板に身を包み、そしてその内部に新たな意味を内包されて同じ場所に息吹きました。小さな門をくぐり、光差す土間を進むと、建物の中には５m四方ほどの池があります。そしてゆらゆらと揺れる水面の下に、デジタルで表示された無数の数字が明滅を繰り返しています。ガイドブックでもよく紹介される見たことのある景色。

直島の町並みに埋もれるようにして誕生した、家プロジェクト第1弾。島の生活そのものが、作品に変換された。

目の前の水の中に、閉じ込められた時間。

でもそれは既視感のような、なぜかちょっと特別な感覚に変換されます。明滅のタイミングはバラバラで統一性はなく、それぞれの数字は直島の島民それぞれが決めたタイミングに従って動きます。ものすごく早いものもあれば、なかなか変わらないものもあり、そのタイミングを決めた理由は何だったのか、分かるはずもないことを知りたいと思ってしまいます。
痛いほど静寂な室内でぼんやりと数字の池を眺めながら、果たして自分ならどんな早さにするんだろうと考えつつ、知らず知らずに進んでゆく時間。目の前の水の中に閉じ込められた時間。建物の中には他にも自由な早さで進むカウンターが時を刻み、時間という確かさがどこか遠くに行ってしまったような、不思議な感覚に浸れる空間でした。

明滅する光は島民ひとりひとりが決めた時間の流れ。それが直島に流れている時間なのだ。

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