野沢温泉・熊の手洗湯

湯の花が、懐かしい風合いの湯船に遊ぶ。

野沢温泉街のあちらこちらにある、地域の方々が維持管理する外湯。古くから「湯仲間」と呼ばれる制度によって営まれている共同浴場です。全部で13ヶ所あるうちのひとつ、熊の手洗湯は、中でも人気の外湯です。
温泉街の中心からは少し離れたところにあり、まるで掘っ立て小屋のような木造平屋の建物には、手書きの文字で熊の手洗湯。入口ドアの上の蛍光灯の白く無機質な明かりが、細く暗い路地を照らしていました。ドアを開けるといきなりの浴槽で、一方の壁にロッカーがあり、湯船より一段高くなっていて、そこが脱衣場です。先客に地元のご老人がひとり。お話を聞くと、毎日日替わりでいくつかの外湯に入っていらっしゃるのだとか。

昭和映画のワンシーンに出てきそうな、レトロな空間。

photo_by_Miya.m_CC_BY-SA_3.0_from_wikimedia_Commons

浴場は時代を感じさせる懐かしい雰囲気で、多色の玉砂利を敷き詰めたような床に、浴槽の立ち上がりも細やかなタイルで装飾されています。昭和映画のワンシーンに出てきそうな色のトーンが素敵です。
お湯は無色透明で、やや硫黄臭がします。細い糸状の湯の花が遊び、柔らかく体を包むような心地よい泉質です。湯温も43度程度と、野沢温泉の中では最もぬるめで入りやすい湯と言われています。
いかにも古くからの温泉地の情緒漂う、この小さな小屋の湯船。その中で先のご老人と他愛もない話をしながら湯につかることは、なにか旅として、とても刺激的なことで、そして同時に体が解きほぐされ緩んでいく素敵な時間でした。

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