日の岬

岬が、岬である理由が語られる場所。

岬というのは、だいたいにおいてそこが周辺の陸地において最果の地であり、それより向こうには別の世界があるという、どこか感傷的な気分を起こさせる場所ではないでしょうか。山本コータローが唄ったのは、ひとり旅の岬にて切ない思いに終止符を打ち、そして自分のあるべき街へ戻るという心情でした。「岬めぐり」の世界の中では、岬は終わりと始まりの交錯する場所であることが象徴的に表現されているのが印象的でした。
同じようなノスタルジックな空気が感じられたのが、日の岬でした。晩秋の午後も遅く、耳を澄ますと遠くに冬の足音が聞こえそうな冷たい風が海から吹いてきて、辺りは寂廖とした雰囲気です。

海の上を、夕焼け色の光点が瞬く光景。

日の岬パークという観光施設があるのですが、休館日なのか閉館なのか入口のドアは鎖で結ばれ、人の気配は全くありません。僕の他にここを訪れる者もなく、少なくともその日、日の岬は忘れられた場所でした。
ここには灯台がひとつあります。和歌山県の最西端、標高200mの岬の突端に立つ日ノ御埼灯台。その辺りからは太平洋を眼下に望み、四国や淡路島、背後には紀伊山地を見ることができるその眺望は秀逸です。
やがて日が暮れ始めます。海の上をキラキラと夕焼け色の光点が瞬く光景はまさに絶景。そのあとも誰も来なかったその日、この景色を独り占めすることができました。

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