子規堂

知らずのうちに、正岡子規の世界に引き込まれる。

松山では明治文化の風雅な香りが随所に感じられます。そのひとつ、子規堂は松山市駅の近く、下町風情の街区に溶け込むようにして建っています。正宗寺という寺の境内にある、こぢんまりとした木造の建物。正岡子規が17歳
までを過ごした住居を復元した資料館です。いかにも時代を感じさせる雰囲気が印象的で、セピア色の正岡子規が玄関の引き戸を開けて出てきそうなくらいです。

タイムスリップを味わえる、街の一角。

建物内には彼が愛用した当時の机や遺墨や遺品、写真など約100点が展示されています。さらに親交の深かった夏目漱石に関係する原稿や文献など、貴重な文学資料を見ることができます。それらは明治時代松山に流れていた文学の新しい潮流を感じさせるものばかりで、その縮図を眺めるのはなんとも贅沢な時間旅行をしている気分です。
庭にはかつて夏目漱石が坊っちゃんの中で「マッチ箱のような汽車」と記した、現存する最古の軽便機関車・坊っちゃん列車も展示されています。また野球とも所縁が深い正岡子規にちなんだベースボールの碑も建てられています。
小さな敷地の中に近代日本に様々な影響を与えた彼の功績がぎゅっと詰め込まれていて、知らず知らずのうちに正岡子規の世界に引き込まれていくような感覚。当時の松山を切り抜いて持ってきたみたいな、子規堂はちょっとしたタイムスリップを味わえる街の一角でした。

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