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旧奈良監獄 旧奈良監獄

旧奈良監獄

きゅうならかんごく □奈良県奈良市
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圧倒的な存在感を放つ、刑務所の名建築。

旧奈良監獄

奈良少年刑務所。奈良で生まれ育った私は、奈良監獄と呼んだことはありません。奈良市街地の北のはずれの丘陵地にあり、近寄りがたい雰囲気のある場所でした。実際、自宅からは歩いて行ける距離にあるにもかかわらず、少年刑務所の正門を見たことさえなかったのです。でも今は旧奈良監獄と呼ばれるこの施設を見学すると、思いがけない歴史や存在意義、そして建築物としての美しさに心を打たれました。今まで持っていたイメージ全てが覆されるくらいに。

網走監獄にも影響を与えた、明治の五大監獄のひとつ。

旧奈良監獄

奈良少年刑務所は明治時代、1908年に建てられました。近代化の波は刑務所にも当てはまり、それまでの動物の檻のような牢獄から西欧式の頑丈で大きな建物に変わりました。「明治の五大監獄」のひとつで、のちに建設された有名な網走監獄にも影響を与えたといいます。当初は奈良監獄と呼ばれ、それが現在の名称の由来です。大正時代に奈良刑務所、戦後に奈良少年刑務所と名を変え、最終的には若年の受刑者を収容する刑務所として100余年使われてきました。

もう殆ど残されていない、ありのままを見られる機会。

旧奈良監獄

しかし古い建物であり耐震性の問題から2017年に廃庁となり、紆余曲折を経て2024年にホテルとしてリノベーションされることに。それはそれで期待も大きいのですが、まず耐震工事が始まるということで、その前の2019年に最後の一般公開が開催されました。その後ホテル計画の遅れで工事着工を待つ間、特別なツアーでのみ見られるチャンスを利用して訪問しました。

微動だにせずこの監獄を守ってきた、迫力と誇り。

旧奈良監獄

丘の上に立つ旧奈良監獄は、まず長大なレンガの擁壁と、正面に構えるレンガ造りの正門がインパクトを与えます。高さ4.5mの堅牢な壁はそばに立って見上げると、もうその先には空しか見えません。正門には青銅製の銘板に「奈良少年刑務所」の文字。最上部にドーム型の屋根を載せた左右の塔によって、どっしりと地面に腰を下ろした正門。100年以上の歴史と一緒に、微動だにせずこの監獄を守ってきた迫力と誇り。そんな唯一無二の存在感を放つ門をくぐって、旧奈良監獄の特別な世界に足を踏み出します。

奈良監獄が持っていた、特別な資質とは。

旧奈良監獄

まず右手にある平屋建てレンガ造りの建物。この時は資料館として貴重な品々が展示されていました。刑務官の服装や警棒、手錠などの監獄らしい展示物や、年表や写真のパネル展示。このあと本館にも続く資料を見ていくと、奈良監獄が特別な資質を持っていたことが分かります。それは若年の受刑者が多いゆえ、刑罰よりも更生に重きが置かれていたこと。労働や勉学に励み、時には刑務所を出て地域に奉仕していたこと。監獄内には受刑者が理容師として働き、地域の人も利用できる理容室まであったこと。そしてこの稀代の監獄建築を特徴づける赤レンガも、彼ら自身で焼き、積み上げたものであること。いつしか奈良監獄は地域の厄介者ではなく、更生を目指す受刑者とその活動を見守る刑務所として親しまれてきたのです。

旧奈良監獄の独創性を決定付ける、「ハビランド・システム」。

旧奈良監獄

さて、正面に建つ本館に対峙します。中央にそびえる三角屋根、そこからシンメトリーが美しいレンガ造りの洋館。一見、明治時代の迎賓館のようにも見える外観です。威風堂々とした重厚な建築、そして旧奈良監獄の独創性を決定付ける「ハビランド・システム」と呼ばれる放射状の建物の基幹部でもあります。まさに扇の要のように、5つの収容棟がこの建物に連結されているのです。建物は2階建てで、それぞれの階に中央監視所があります。中心にある監視台からは、放射状に伸びる5つの収容棟全ての廊下が見られるようになっています。1階天井部分は中央が吹き抜けになっているため2階の様子も見えるし、逆に2階の監視台からも1階が見えるようになっています。こうして約500室ある居房が全て1人でも監視できるように設計されているのです。

映画で見る刑務所、そのままのイメージ。

旧奈良監獄

真っ直ぐにのびる収容棟の廊下を歩きます。映画で見る刑務所そのままのイメージです。居房はいくつか公開されていて、中に入ることもできます。固く重い扉はたとえ施錠されなくても、内側からは開かないようになっています。小さな監視窓、配食用の小さな穴、扉の横には呼び出し用のボタンがあり、中から押せば黄色い札が廊下側に倒れます。内部には質素な水回りとトイレ。外部から明かりをとる窓は高い位置にあり、この小さな部屋の中には十分な光を取り入れています。収容棟では数人で暮らす共同部屋と単独部屋の他にも、問題を起こした受刑者を入れる懲罰房も公開されています。分厚いコンクリート壁で2層に仕切られた、恐ろしいまでに狭い部屋です。

ほぼ当時のまま、監獄としての全貌を残す。

旧奈良監獄

建物内部はどこを見ても初めて見る景観や意匠で、非常に見ごたえがあります。刑務所という建築だからこそ、特別な機能があったり、逆に余分なものを極限まで排除したり、また経年による渋さとか、コンクリートと木造のコンビネーションとか。新たな気づきの連続で、それはそれは楽しい見学になります。旧奈良監獄は明治の五大監獄の中で唯一、ほぼ当時のままの監獄としての全貌を残し、さらに長年にわたる更生と地域貢献の歴史なども踏まえて、2017年に重要文化財に指定されました。
約32,000坪という広大な敷地内には、受刑者が医療を受けられる医務所、舞台のある講堂、精神異常をきたした者を隔離する檻、江戸時代に使われていた木造の牢屋なども見学できました。これらのうち何がホテルとして残されるかは分かりませんが、歴史的な価値がひとつでも無に帰すことがないように祈ります。

photo.

アクセスマップ

詳細情報

名称 旧奈良監獄
所在地 奈良県奈良市般若寺町18
問い合わせ先 03-5201-1313 | 旧奈良監獄保存活用株式会社
休業日 -
料金 -
駐車場 -
公式サイト http://former-nara-prison.com/
wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/旧奈良監獄
食べログ -
トリップアドバイザー https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298198-d15333853-Reviews-The_Former_Nara_Prison-Nara_Nara_Prefecture_Kinki.html
LAST VISIT 202011                         

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