武庫川渓谷廃線跡

むこがわけいこくはいせんあと　□兵庫県西宮市

武庫川渓谷に寄り添う、風光明媚な廃線跡。

打ち捨てられた廃線は、いつもどこかもの悲しい雰囲気に包まれ、まれにある訪問者の郷愁を誘います。寂寥感をまとい、やがて忘却の彼方へと向かってゆく、その退廃的な廃線のイメージは、ファンにはある種たまらない魅力です。
でも旧国鉄・福知山線の廃線跡は、ちょっと違います。豊かな自然、美しい渓谷と同化するように佇んでいて、四季折々の風景に溶け込んでいます。使われなくなり本来の役割を終えた寂しさと、この美しい自然を楽しんでいるような悠然を合わせ持っていて、何か新しい廃線跡の在り方を啓示してくれているような場所です。

朽ち果てた枕木が、物語るもの。

朽ち果てた枕木が物語るのは、どこか切ない気持ちと、今自然へと還ってゆく安息の日々。もう明かりのつくこともないトンネルが語りかけるものは、打ち捨てられた寂しさと、誰にも邪魔されない暗闇を手に入れた充足感。そこにあるものが皆、静かな孤独を楽しんでいるかのように、渓流に寄り添っています。
JR生瀬駅と武田尾駅を結ぶ区間、今は複線化され長いトンネルが結んでいますが、かつては武庫川に沿って線路が続いていました。昭和61に廃線となりレールが撤去されましたが、今もこのルートは残され、穴場的なハイキングコースとして人気があります。

自然を、全身で感じながら歩く。

全長は約6km。ゆっくり歩いても2時間ほど。線路跡のため基本的に平坦で、所々で草木が生い茂って道幅が狭くなっているものの、とても歩きやすいコースです。それになんといっても全線が武庫川の雄大な渓谷に沿っていて、自然を全身で感じながら歩けることが魅力です。最南端付近にある高座岩と呼ばれる岩山や、無数の瀬、それらを包み込む山々が美しく、風光明媚な景色が続きます。
また道中には6本のトンネルがあって、中には400mを超える長いものも。トンネル内でカーブを描いてたりするので光が全く届かず、漆黒の暗闇を体験できるのも魅力的。足下はそれほどよくないし、他のハイカーもいますので懐中電灯は必携です。天井は煉瓦造りになっていて、とても風情があります。機関車の煙で黒く煤けていて、実際にここを汽車が走っていたリアリティを感じさせます。

武田尾駅寄りにある、赤い鉄橋がハイライト。

また、武田尾駅寄りにある赤い鉄橋がハイライト。枕木の上を歩くことはできませんが、横手の犬走りを進みます。所々錆びつき、赤色の塗装も色あせた廃鉄橋。その姿はとても印象的で、一度見たらずっと記憶に残りそうなほど、存在感を放っています。
他にも見どころが本当にたくさん。見張り台や標識など鉄道の施設も点在していますし、紅葉や桜並木などの植物の美しさもあります。さらに見つけたのは、用途はまったく想像できない、途中まで掘られた洞窟。一足踏み入れるだけで気分は冒険家です。
実はこのハイキングコース、JRも管理していない、非公認のコースです。歩くのはあくまで自己責任。多くの人が歩くので、今も道としての体裁を保っていますが、いずれは橋梁やトンネルの劣化などで封鎖される可能性もあります。他にはない多くの魅力にあふれた道なので、今後は何らかの管理をして保存をしてほしいと思いますが、もしいつか通れなくなるとしても、それまでには何度も訪れたいと思える素敵な廃線跡でした。

photo.

アクセスマップ

詳細情報

名称	武庫川渓谷廃線跡
所在地	兵庫県西宮市塩瀬町名塩
問い合わせ先	-
休業日	-
料金	-
駐車場	なし
公式サイト	-
wikipedia	-
食べログ	-
トリップアドバイザー	https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g1022819-d1384645-Reviews-Nukogawa_Valley-Nishinomiya_Hyogo_Prefecture_Kinki.html
LAST VISIT	201310