徳島中央公園

城下町として発展した徳島の、秘められた心臓部。

徳島市はかつて、町のシンボル・徳島城を中心とする城下町として栄えました。でも明治時代の廃藩置県によって徳島城は廃城となり取り壊され、あとには石垣と庭園、そして鷲の門だけが残りました。正門である鷲の門は戦時の空襲により焼失しましたが、1989年に市民の寄付によって復元されました。戦後になると歴史の再評価と観光資源のために、各地で城を復元する気運が高まりましたが、徳島城はついに復元されず、現在は徳島中央公園として市民の憩いの場として親しまれています。
でも公園内では、あちらこちらに城の往時を偲ばせる景色が見られます。例えば優雅な旧徳島城表御殿庭園は江戸時代当時のものですし、各所に存在感のある石垣が廻らされています。徳島城博物館では貴重な史料にも触れることができます。

水と緑に包まれた、街中のオアシス。

この公園は徳島市街の中心部、国道11号線沿いにあるんですが、敷地内に一歩入るとのどかな雰囲気に包まれていて、周囲の喧騒はウソのように静かな空気が流れています。広大なバラ園もあるし、春には徳島市随一の桜の名所でもあり、街中のオアシスとしても愛されています。
鳩がぺっちゃりと地面に腰を下ろして、日向ぼっこをしていました。驚かさないようにそっと脇を抜け、園内を散策します。すると見覚えのあるベンチがひとつ。藤棚の下にあるそのベンチで、ちょうど10年前に野宿をした場所。たしか、友人と原付で四国を旅した時のことです。朝起きると見知らぬ中年女性がベンチに座っていて、どういう経緯があったのかは忘れましたが、持ってらしたおにぎりを分けてもらい、一緒に食べたことを思い出しました。あの頃は若かったな、なんて思いながらも、実は10年後の今日に、もう一度同じように原付で四国一周の旅に出るなんてことは、あの時は想像だにしていませんでした。
もうすぐ夏がやって来ます。夕方になると公園のあちらこちらで、阿波おどりの練習が始まりました。

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